3Dプリンティングをはじめ、デジタルデータをもとにした創作技術「デジタルファブリケーション」。これらは広告・デザイン領域の可能性をいかに広げていくのか。TOKYO2020の表彰台プロジェクトなどを手がけた、平本知樹さんが解説する。


オランダ・アムステルダムにある「MX3D BRIDGE」。

真球状のドーム「OCTADOME」。
3Dプリント技術から生まれる「名作」
東京都現代美術館で7月から10月にかけて「ジャン・プルーヴェ展」が行われていました。ジャン・プルーヴェはフランスで金属工芸家としてキャリアをスタートさせた後、スチールを用いた家具・建築へと製作の領域を広げていきました。その後、フランスの戦後復興計画の一環としてプレファブ住宅を複数考案していきます。
プルーヴェのデザインしたスタンダードチェアは、約90年経った現在でも定番家具として製造されています。金属工芸家として培った技術をもとに、かかる重さが比較的軽い前脚には細い鋼のチューブを使い、より大きな重さがかかる後脚には、太さをもたせた中空の鋼板を用いることで椅子にかかる重さを床へ逃がすことができる構造になっています。
自らを「構築家」(constructeur)と名乗るように、素材、カタチ、つくり方を横断的にデザインに昇華したものだからこそ、その時代を象徴する家具として今もなお使われ続けています。デジタルファブリケーション技術をつくり方と捉えると、素材・カタチと連動した作品や家具、建築などは...