京都の老舗京菓匠「七條甘春堂」のパッケージを見かけ、「品があってモダン」と惹かれた。手がけた関本明子さんが、どんな方なのかとお会いしたくなって、西麻布にあるオフィスを訪ねた。



関本さんがアートディレクションをしている「七條甘春堂」。書家の寺島響水さんが描いた「七」の字をモチーフに使用。撮影は瀧本幹也さん。
はんなりしたやわらかさをデザインに
オフィスの扉を開けると、ところ狭しと並べられた華やかなパッケージが目に飛び込んできた。群になると、本人はそうと気付かなくても、デザイナーの作風みたいなものが見えてくる。過剰な華美に陥らないあでやかさ、上質さを備えたカジュアルな感覚、そして何より「わあー!」と心を動かしてくれるチャーミングさが伝わってくる。
まずは「七條甘春堂」から。「知り合いからの依頼でパッケージのリニューアルを手がけることになったのです」(関本さん)。1865年創業という京都の老舗で、伝統の技を受け継ぎながら丁寧な仕事を重ねつつ、時代に合わせた革新的なおいしい和菓子もつくり続けている。仕事を始めるにあたって、関本さんはお店や工場を訪れた。そして、今の時代に通用する商品が少なくないのに、それが埋もれてしまっている、伝わっていないと感じたという。「ブランド全体を俯瞰して、見せ方・伝え方を提案することが大事と考えました」(関本さん)。ブランドの根っこにあることをどう表現し、伝えていくのかをデザインした。
出自が京都であることを表現するにあたり、「東男に京女という言葉もありますが、はんなりした女性らしさが京都らしさの表現になるのではと考えました」(関本さん)。同じ京都に「甘春堂」という菓子屋もあることから、「独自性をわかりやすく伝えるため」に、「七」という文字を象徴的に使うことにした。書家の寺島響水さんに依頼して、墨文字で描いてもらい、マークとしてデザインを整えた。
パッケージは、白いボックスに季節を表現するグラフィカルな色面、すっとした墨文字が入っている──筆の描くたおやかさとグラフィックのモダンさが、ちょうどいい塩梅で溶け合い、「はんなりした」イメージを伝えている。天面に「七」の文字が入っていることで、屋号を示す機能も果たしている。お菓子の種類が多いことから、従来はさまざまなデザインが混在していたが、それらを改めて整理し、お客にとってもお店の人にとってもわかりやすい分類にしたという。