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注目のU35ディレクター(21インコーポレーション)

21インコーポレーション

テレビCMの草創期である1964年に設立された21インコーポレーション。毎年、新卒採用を実施しており20~30代の若手も多数活躍する。2013年に入社した同期同士でもある、ディレクターの菅井良典さん、清水大志さんから見た仕事の醍醐味とは。

菅井良典(すがい・よしのり)(左)
21インコーポレーション 企画・演出部。1989年広島県生まれ。広島市立大学芸術学部卒業。2013年入社。

清水大志(しみず・だいし)(右)
21インコーポレーション 企画・演出部。1990年兵庫県生まれ。大阪芸術大学卒業。2013年入社。

広告分野の映像制作に打ち込める環境

CMを中心とした映像コンテンツの企画・制作を行う21インコーポレーション。4代目の社長を務める脇田歩さんは、自身も1989年に新卒で入社し、現在もディレクターとして現場に立つ。「広告分野の映像制作に思い切り打ち込める環境。組織の活性化のためにも若いパワーが必要なので、野心ある若者に来てほしい」(脇田さん)との思いから、毎年新卒採用を実施している。

新卒での入社後は、まずプロダクションマネージャーとしてキャリアをスタート。制作現場での経験を積んだ後、主なキャリアパスはプロデューサーに昇進するか、社内試験を通過後にディレクターとして企画・演出部に異動する。今回登場する2013年入社の菅井良典さん、清水大志さんはともにディレクター志望で、試験を受けて入社2年目で企画・演出部へと移った。

美大出身の2人だが、学生時代に映像制作に積極的に携わっていたわけではない。菅井さんはプロダクトデザインを専攻。放送学科出身の清水さんも、制作に打ち込んだ経験があるわけではなかったが「広告やテレビCMが好き」という思いは共通していた。脇田社長は採用のポイントについて、「学生時代の経験よりも、過酷な制作の現場を乗り越えられる力があるか。若手であっても年齢も経験も上回るスタッフたちを現場で引っ張る力がありそうかを見ています」と話す。

継続的に大手企業のCM演出を担当

菅井さんは近年、出光興産の企業CMの演出を継続的に担当。「最初に手がけた『世界の日の出』篇と『熱』篇、『街の顔』篇という2021年に流れた3本を気に入っていただき、その後も継続的にお声がけいただいています。『手紙』篇では苫小牧にある出光の北海道製油所の中に入らせていただき撮影しました」と、クライアントや広告会社からの信頼も厚い。

2021年には、ディレクター兼プランナーとして関わった、和歌山県農業協同組合連合会の「有田みかん」のCM「みかんの島」篇が、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのフィルム部門 Aカテゴリーのファイナリストに選出。ストップモーションを駆使したコマ撮りアニメで、企画構想から一コマずつ動きをつけるアニメーションまで、自身が担当した。

「新たなソフトを購入して動きを研究していったんです。企画から実現までコツコツと組み立てていくプロセスは苦ではないどころか、大好きなタイプ。学生時代にプロダクトデザインの図面を引いたりしていた経験が活かされているのかもしれません」と語る。

そんな菅井さんの得意分野が発揮されたのが、2022年に公開された、とある漫画作品のPRムービー。「日頃から漫画の仕事がしたいと話していたので嬉しかったです。ファンとしての熱意を込めたことで喜んでいただけるような出来になったと思います」(菅井さん)。

    菅井さんが手がけた仕事

    出光興産「手紙」篇

    和歌山県農業協同組合連合会/有田みかん「みかんの島」篇

    雪若丸「親子で焼きおにぎり」篇

ダンスものなど「音」起点の映像が得意

清水さんはそのユニークな表現が面白いと話題を集めてきた、フルタ製菓のCMディレクターを務める。同CMは、テレビ朝日でアニメや特撮ものが放送される日曜朝の「ニチアサ」枠で流され、アニメファンをはじめSNSでも毎回大いに話題となる定番シリーズだ。

フルタ製菓と21インコーポレーションの付き合いは長く、2022年9月にも新テレビCMを公開。「今回はメタバースをテーマに、過去に人気のあった『フルタマン』をモーションキャプチャでつくりました。とにかくインパクトのあるキャラクターを求められているので、あえてプレステ2初期のCGのようなチープな出来にしています」(清水さん)。

入社前はプランナー志望で、ユニークかつ笑えるようなCMを作りたいという思いが強かった清水さん。ディレクター兼プランナーとして現場に関わる中で、多種多様な映像を演出する楽しさを知ったという。

近年では、「バブリーダンス」で知られる振付師・akaneさんとのダンス関連の仕事も増加。アディダスジャパン「『自由なジブンに変わってみる?』adidas スポーツブラで踊ってみた!」といった動画のほか、日本テレビ系情報番組『スッキリ』の「ひとつになろう!ダンスONE プロジェクト ’21」、アイドルグループ「ラストアイドル」の楽曲『当たりくじ(雲の上はいつも晴れ)』のMVといった企画にも携わっている。

「つくった映像が世間に公開されると家族や友人にも喜んでもらえ、やりがいを感じます。学生時代に音楽をやっていたこともあり、音にあわせて映像をつくるのは比較的得意な方かもしれません」。最近は長編ドキュメンタリー映画の演出にも進出。CMをはじめとする短い尺の映像とは異なる、新境地にも挑戦している。

    清水さんが手がけた仕事

    フルタ製菓「フルメタバース」篇

    日本テレビ系『スッキリ』「ひとつになろう!ダンスONEプロジェクト ’21」

    ラストアイドル『当たりくじ(雲の上はいつも晴れ)』MV ©ラストアイドル製作委員会

現場で自ら習得する技術を大切に

2人のディレクターに共通するのは、誰かの記憶に残るようなCMを生み出していきたいという強い思いだ。ともに「解決しなければいけない課題や制約があるからこそ、広告の仕事は面白い」と口を揃える。

Web動画などが増えて映像の幅が広がる今こそ、短い尺であるテレビCM制作から得られる経験やスキルが活かせる場面は広がっている。「感覚ではなく、理詰めでカット切りやつなぎといった独自の技術を身につけていってほしい。これらは先輩から直々に教わるのでなく、現場で自ら経験を積んで習得するもの。あらゆる仕事のプロセスにおいて必要な“質”を大事にしていってほしいですね」(脇田さん)。

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