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デザインの見方

資生堂の「唐草模様」が美意識の根源

花原正基

資生堂「唐草模様 包装紙」(1927)
D/沢令花

私の美意識の基盤となっているデザインのひとつが、資生堂の「唐草模様」です。唐草模様は、植物の蔦やツルをモチーフにした文様で、古代メソポタミアからシルクロードを渡り、唐の時代に日本に伝わったといわれています。今回、セレクトしたのは、1920年代に資生堂で使用されていた包装紙。資生堂でデザインミームとして脈々と受け継がれてきた唐草模様で、今日までさまざまなデザインにアレンジされているバイブル的な存在です。

この唐草模様の魅力は、化粧品を感じさせる華やかさがあり、曲線がその場にとどまらない生き生きとした活力や生命力のようなものまで表現されていることだと思います。私はこの唐草模様をはじめ、美しいデザインに憧れ、美しいものをクリエイションする会社で働きたいと思い、新卒で資生堂に入社しました。

これまで何度も「資生堂らしい美しさ」とは何かを考え、唐草模様のデザインに立ち返りながら、自分はどういったスタイルで表現するべきか、常に模索してきました。現在は独立して活動していますが、私にとっての美意識の根源は変わっていません。どんな仕事でも、私がデザインするものは、この唐草模様のようにエレガントで美しくあってほしいと考えています。

ただ、情報過多な時代に、単に美しいだけでは人の感情を揺さぶるものになりにくいのも事実です。そんな中、私が自らに課したビジュアルクリエイションのテーマが「美しくて、強い」です。企業やブランドのシンボルにもなり得るくらい、圧倒的に...

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