知り合いから紹介され、「WABARA」というブランドの存在を知った。滋賀県守山市で「Rose Farm KEIJI」というバラ農園を営みながら、東京・青山に「WABARA LABORATORY TOKYO」を構え、「世界中の花屋さんに並ぶバラを生み出す」ことを目指している。Rose Universe 代表取締役を務める國枝健一さんの話を聞いた。
祖父が興したバラ事業をブランド化する
「バラ園は祖父が興したもので、僕は幼い頃から当たり前のように出入りしていました。でも、継ぐ気はまったくなかったのです」と國枝さん。どのような経緯から今に至ったのか。大学を出て企業に就職したものの、起業したいという意志を持っていたこともあり、半年で会社を辞め、家業に携わることにした。バラづくりには、外から見ると門戸を開ける可能性がいろいろある。国内にとどまらず、世界を視野に入れたビジネスにしていけるのでは──ベンチャー企業を興すように、新しい試みを行なっていこうと考えた。
父である國枝啓司さんは、“ばら作家”として、品種をかけ合わせて新種をつくる育種を手がけ、世に送り出してきた。育種とは、異なるバラの雄しべと雌しべを交配させて新しい品種をつくり出すこと。が、受粉後に発芽する確率はわずか数パーセント。その中から商品化できるのは1年に数品種あるかないか。さらにそこから「WABARA」として販売されるまでには発芽後3~5年程度かかる。「こんなバラをつくりたい」という感と勘をもとに、地道で難儀な労を重ね、道を築いてきた。
そうやって生み出されたバラは、どれもたおやかな佇まい──これまで私は、バラに対して華麗でゴージャスな花というイメージを抱いているくらいだったが、これは明らかに違う。可憐な花弁の佇まいや繊細な色合い、過剰に陥らない香りなどが清々しい。部屋にあったら、あの人に贈ったらと、バラと過ごすシーンが浮かんでくる。
「WABARA」の上質さを活かし切ったコスメの開発
新しいビジネスを構築したいと考えた國枝さんは、父・啓司さんが手がけたバラをブランド化することに──「WABARA(和ばら)」とネーミングし、「『WA=和』と付すことで、日本のバラを世界へ向けて」という思いを込めたブランドづくりに着手した。ネットで発信したところ、コロンビアの会社からコンタクトがあった。滋賀県にある農園を見てもらい...