「ととのう時間」を提案するクラフトジンのブランド「HOLON」。ブランドの立ち上げの前段から対話を重ねることで、その独自性が生まれたという。今に至るまでの経緯を聞いた。
「自分の物語として語れる」ようになるまで
「HOLON」の立ち上げのきっかけは、プロデューサーの堀江麗さんがクラフトジンに出会ったことにある。「前職のIT企業で日々忙しく働く中で、静かに自分と向き合う瞑想やヨガなどが逃げ場になっていきました。そんな2018年頃に出会ったのが、クラフトジンです。最初は蒸溜所ごとに個性が際立つその味わいに惹かれて飲むようになり、段々とクラフトジンを楽しむという体験自体が持つ魅力に気付いて。帰宅後に一人で楽しめるし、瞑想やヨガのように『やるぞ!』と頑張らなくても手軽に自分と向き合う時間を設けられるところにさらに惹かれていきました」(堀江さん)。
自身のブランドの立ち上げを検討する中で、蔵前の「東京リバーサイド蒸溜所」(エシカル・スピリッツ)の設立の話が。そこで立ち上げに携わりながら商品開発を進め、OEM生産ができることになった。
そんな誰もが納得するブランドの立ち上げストーリーだが、「こうして話せているのは、大谷(省悟)さん(301代表)との対話を重ねたから。最初は自分がなぜクラフトジンがつくりたいのか、それによってどんな体験を提供したいのかが、言語化できていない状態でした。知り合いのバーテンダーの野村空人さんに大谷さんを紹介してもらい、約3カ月かけてHOLONの在り方を壁打ちさせてもらったんです」と堀江さんは振り返る。
大谷さんは話を受け、「人と計画の車輪」という自らのメソッドに当てはめて考えていった。「D2Cであってもそうでなくても、ブランディングにおいて重要なのは、発起人がそのブランドにかける確固たる想いを明確にすること、そしてそのブランドを通じてどのような体験を提供したいのかをチームメンバーが自身でイメージを持って行動できる計画をつくることだと考えています。『HOLON』の場合も、堀江さんの想いを掘り下げることに時間をかけました。むしろそれしかやっていないといってもいいくらいです」(大谷さん)。
堀江さんに投げかけられたのは「(その想定は)本当か」「それを知り合いで実際にやるのは誰か」「自分だけの願望ではないか」「それは本当に面白いのか」といった質問。「特に印象深かったのは、『新しい習慣って本当にできるものなのか』という指摘ですね。“新しくつくる”というよりも...