気になるあのCMの演出やキャスティングについてディレクターにインタビュー。今月取り上げるのは、ACジャパンの「不寛容な時代~現代社会の公共マナーとは」をテーマとしたテレビCMだ。
意外性に意外性を重ねた“ラップバトル”
コンビニのレジで、支払いに手間取る高齢の女性。店員から刺さる視線や、後列から聞こえる足踏みに焦り「ごめんなさい……」とつぶやくと突然、後ろの強面の男性がラップを口ずさむ。「♪Yo!もしかして焦ってんのか おばーさん 誰も怒ってなんかない」。意外にも女性も「♪焦ったらまさかの優しい発言」とラップで応戦し、店内は大団円に。これは7月1日からスタートし話題となった、ACジャパンの「不寛容な時代~現代社会の公共マナーとは」をテーマとしたテレビCMだ。
演出を手がけたのは小林達行さん。「強面の男性のラップに女性が応戦し“ディスらないラップバトル”を展開する大筋は当初から決まっていました。そこでその意外性をフックに、『たたくより、たたえ合おう。』のメッセージを伝えようと考えました」と説明する。強面の男性にはラッパーの呂布カルマを起用し、店員役も金髪で派手なメイクの装いに。見た目で判断されがちな社会へのアンチテーゼを示した。
ラップを始めるタイミングに合わせて演者がマイク代わりのアイスクリームやソース、バーコードリーダーを持ち出すが、それも意外性を意識してのこと。当初はマイクをどこからともなく取り出す演出だったが、「最初から歌う気満々だったじゃん、と伝わり見ている人の気持ちが冷めてしまう」(小林さん)との考えから現在の展開となった。
さらにラストでは、“ラップバトル”に驚いていた店員が、突然「たたくより、たたえ合おう~♪」とメロディアスに熱唱し、「『お前が歌うんかい』と思わず突っ込みたくなるベタな演出」(小林さん)に。他の店内客も加わり盛り上がる中、今度は店員にサビを歌われた2人が唖然と立ち尽くす対比もシュールだ。
また手話とオープンキャプションの字幕も取り入れており、ワイプ上で手話通訳者の木村晴美さんが活躍する様子も見どころだ。撮影では、手話の内容を検討しながら尺に収めることを最重視して調整した。曲調に合ったノリのいい手話を繰り広げる木村さんの様子から、「もう一人の主役」と話題を集めている。
- 企画制作/東急エージェンシー関西支社+高映企画+アンクル
- CD+企画+C/森井聖浩
- 企画+D/辻菜穂子
- 企画+Pr/泉谷智規
- 企画/植木沙織、川上毅、湊佑樹
- D/小川真季、西原美羽
- Pr/森浩介
- PM/山本紋香
- 演出/小林達行
- 撮影/古賀康隆、田中勇輔(手話)、島田洋平(GR)
- 照明/東岡充
- 美術/西川泰弘
- 編集/大西正人、山崎忠幸(オフライン)
- 音楽Pr/榎裕一
- 音楽/栃尾恒樹(エンジニア)
- MA/中村将人(録音)
- MIX/山下卓哉
- 手話監修/江副悟史、松森果林、佐多直厚
- 手話通訳/小松智美、脇水彩
- ST/川崎祐美
- HM/赤澤洋平、大岩乃里子
- CAS/久保ゆき乃
- NA+出演/呂布カルマ、小田原さち
- 出演/蘭(店員)、木村晴美(手話)