高校生のとき、佐藤可士和さんがデザインされたNTTドコモの携帯電話「N702iD」を使っていました。小中高とサッカー漬けの毎日で、おしゃれな生活に憧れつつも、ファッションなどには疎く、将来、自分がデザイナーになるとも思っていませんでした。デザイン業界のことも、佐藤可士和さんのことも知らず、予備知識はなかったのですが、N702iDが発売されると知ったとき、素直にかっこいいと感動し、機種変更したのを覚えています。
当時、2つ折りの携帯電話は、楕円形で丸みのあるデザインが主流だったので、N702iDの凹凸のない直方体のデザインは際立っていました。
気付くと無意識に、携帯電話を眺めてしまうくらいお気に入りで、斬新なものを所有している喜びを実感していました。瀧本幹也さん撮影の待受画面や、ボタンや画面に出てくる英数字のフォントなど、何もかも新鮮で、本体の外側にある細長い液晶画面に緑色の文字が流れてくるのもワクワクしてずっと眺めていました。
当時は言語化できていませんでしたが、スタンリー・キューブリック作品にも通じる近未来的な世界観や、無駄をそぎ落とした根源的なデザインが僕自身とても好きなんです。僕の勝手なイメージですが、そんな世界観をN702iDから感じ取り、反応したのだと思います。
デザインの面白さに目覚めたのは、高校3年生になってから。母親から『ニューデザインパラダイス』(フジテレビ)という深夜番組を教えてもらったのがきっかけ...