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滞在の「体験」価値をどう生み出す? クリエイターの提案

日常と距離を置き 身を委ねてもらう体験空間

「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」

アンビエントミュージックの創始者として知られるミュージシャン/ビジュアルアーティスト、ブライアン・イーノの個展が9月3日まで「京都中央信用金庫旧厚生センター」で開催中だ。「心地よさ」や「没入感」が好評を博し、当初の会期から延長となった本企画。統括プロデューサーの一人で、プロダクションをリードしたテー・オー・ダブリューの竹下弘基さんに話を聞いた。

「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」の会場は京都駅から徒歩約5分の「京都中央信用金庫旧厚生センター」。築90年の歴史を持つ建築物だ。

「アンビエント」な街、京都で

ブライアン・イーノは、1972年にデビューした英国のロックバンド「ロキシー・ミュージック」のメンバーとして活躍後、プロデューサーとしてデヴィッド・ボウイやコールドプレイなどを手がけた。音楽活動と並行してビジュアル・アートの創作にも力を入れ、音と光が合わさりながら自動生成し続ける「ジェネレーティブ・アート」を提唱。これまで世界中で展覧会を開催しており、今回の展覧会では4つの「ジェネレーティブ・アート」作品を展示している。

そんなイーノが今、日本の京都で展覧会を実施することになった経緯を、テー・オー・ダブリュー執行役員/プロデューサーの竹下弘基さんはこう話す。「始まりは、もう1人の統括プロデューサーでもあるTrafficの代表中村周市さんが2016年頃から京都でのイーノのアートイベントを企画し、17年に京都出身でイーノ好きの私が意気投合したことから。以降一緒に企画・制作に取り組んできました。『AMBIENT KYOTO』はコロナ禍を経て改めてイーノにアプローチをして実現したものです」。

そこで以前から竹下さんが親交のあった盆栽研究家の川﨑仁美さん、CCCアートラボの磯谷香代子さんに声をかけ、4人のコアメンバーでインスタレーションを中心とした展覧会を提案することになった。

「京都を提案したのは、アンビエントミュージックとの親和性が高いと考えたことも一因です。アンビエントとは“環境の"“周囲の"といった意味合いを持ち、アンビエントミュージックはその場の空気に漂うような音楽を指すと理解していますが、京都にも目に見えないけど漂う京都ならではの何か、がある。ちょうどその頃、会場となる『京都中央信用金庫旧厚生センター』とのご縁もあり、着々と準備が進んでいきました」(竹下さん)。

何度もイーノ側への提案や調整を重ね、無事展覧会の開催が決まったのは21年11月ごろのことだった。

没入感を高める体験づくり

「ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、自分の想像力を自由に発揮することができるのです」──本展においてイーノが掲げたのはこんな言葉だった。これを竹下さんは、次のように読み解いたという。

「イーノはこれまでも、アンビエントミュージックを『意識して聴かなくてもいいが、興味深い音楽』と話しています。今回の展覧会では、そんな音楽に囲まれることで日常の文脈を手放してもらい、豊かに想像を膨らませられるような場にしようと考えました。昨今の展覧会を含む体験は、スマホで...

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