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滞在の「体験」価値をどう生み出す? クリエイターの提案

「日常の中の非日常」を提案する泊まれる公園

インザパーク「INN THE PARK」

2022年3月、自然に囲まれた公園に泊まることができる「INN THE PARK 福岡」がオープンした。17年10月に静岡・沼津に誕生した「INN THE PARK」に続く宿泊施設だ。SNSを通じて「球体テント」が話題になった同施設ではどのような魅力を打ち出しているのだろうか。

「INN THE PARK」(静岡・沼津)の敷地内に配された球体テント。

©阪野貴也

「海の中道海浜公園」(福岡)内に3月にオープンした「INN THE PARK 福岡」。

©阿野太一+楠瀬友将

“イレギュラーな何か”に人は引かれる

静岡県沼津市で30年以上運営されていた「少年自然の家」をリノベーションして2017年10月にオープンした“泊まれる公園”「INN THE PARK」。約60ヘクタールの自然空間に、幻想的な「球体テント」が配された宿泊施設が好評を博している。それに次いで22年3月、約350ヘクタールの敷地を有する国営公園「海の中道海浜公園」内の「光と風の広場」をリニューアルして設立されたのが、「INN THE PARK 福岡」。「球体テント」などエッセンスは引き継ぎつつも、さらに広大な土地で宿泊体験を提供している。

企画や運営を手がけるのは、不動産仲介サイト「東京R不動産」なども運営する設計事務所OpenAの子会社であるインザパーク。同サイトの運営を通じて、1件目の沼津の施設を手がけるきっかけが生まれた。「事業の一環で自治体の遊休資産を見て回る中で、都心からも行きやすく高速道路のインターからも近い、沼津の少年自然の家と隣接する公園と出会い、魅力を感じて。公共資産の有効活用のための公募がされていたので、当社で宿泊施設の運営を担うのは初めてのことでしたが応募しました」と、デザイナーの大橋一隆さんは振り返る。

その際に提案したコンセプトは「ポップアップホテル」。「元は、日常の場である公園において、非日常な空間を提供できないかと考えたんです。その非日常感を生み出すためのキーワードに据えたのが“SF”。映画『2001年宇宙の旅』に登場する石柱状の“モノリス”のように、公園という日常空間に突如として謎の物体が出現したら、きっと他で見たことがない景色がつくれるのでは、と考えました。そこから、宙に浮いた客室が公園に点在する様子を妄想し、“ポップアップ”というコンセプトを掲げて提案しました」と、立ち上げ時からディレクターを務める三箇山泰さんは話す。

提案は無事採択され、ホテルの運営を手がけることに。「浮いた客室」から、ドーム型テントや球体テントが着想され、徐々に設置されていった。「INN THE PARK」のオープン後...

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