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青山デザイン会議

アイデアとツールの交差点

青木亮作・角田 崇・治田将之(idontknow.tokyo)、佐久間英彰、米光一成

どんなクリエイターも「アイデアを出す」というゴールのない戦いに日々、頭を抱えているもの。アイデアや発想を支援するツールの“生みの親”がノウハウを持ち寄り、それらをかけ合わせたら……そんな妄想から企画がスタートした、今回の青山デザイン会議。

集まってくれたのは、普段は別々に活動するプロダクトデザイナーが集い、コピー用紙をアイデアを生むツールに変える「HINGE」など、さまざまなプロダクトを展開するidontknow.tokyoから青木亮作さん、角田崇さん、治田将之さん。

博報堂のコピーライター・CMプラナーとして活躍する傍ら、個人活動として「ジブン手帳」「Pat-mi」「PETA」などの商品開発も手がける佐久間英彰さん。

パズルゲーム「ぷよぷよ」をはじめ、カードゲーム「はぁって言うゲーム」、発想力を鍛える「むちゃぶりノート」などを生み出した、ゲーム作家の米光一成さん。さて、最強のアイデア攻略法は導き出されたのでしょうか?

発想のツールは紙か、それともデジタルか

佐久間:博報堂でCMプラナーやコピーライターをしています。それとは別に、学生の頃から発明やものづくりが趣味で、10年以上前に「ジブン手帳」という手帳をプロデュースして、今ではライフログといえばジブン手帳というぐらいに成長しました。

青木:「idontknow.tokyo」は、3人のデザイナーが週に1回集まって好きなものを形にするプロジェクトで、位置付けは、佐久間さんのジブン手帳に近いかもしれません。僕と治田はTENTというユニット名で、象印の家電ブランド「STAN.」や「DRAW ALINE」という突っ張り棒など、いろいろなプロダクトをデザインしています。

角田:僕は普段、アウトドアのブランドをやっているので、そっちの話をすると少し毛色が違っちゃうんですけど。

米光:本業はゲーム作家で、「ぷよぷよ」とか、カードゲーム「はぁって言うゲーム」、また昨年「むちゃぶりノート」という発想するためのツールをつくりました。発想に行き詰まるのって、大体が問いの立て方やフレームがおかしいとき。なので、そこを疑うためのツールとしてデザインしたものです。僕はジブン手帳を愛用しているのですが、自費出版と聞いてびっくりしました。

佐久間:愛用いただいて光栄です!最初は出版社から出したところ、全く売れなかったんです。2年目は出せなくなってしまったのですが、買ってくれた人たちは絶対に裏切りたくないと思って自費出版しました。

青木:そうか、手帳って毎年買い換えるから、継続が誠意なんですね。

佐久間:しかも日付が書いてあるので、売れ残ったら完全に廃棄するしかない。

治田:それは怖い!

佐久間:今はコクヨさんで、もう私から手離れしているので安心なんですけどね。

青木:でも、あのヒリヒリ感が懐かしい?

佐久間:二度と経験したくないですが、ときどき冒険したくなります(笑)。

青木:僕たち3人の間では、結局アイデアは紙に書いてしまって、デジタルのツールは発想法としては使えていないというのが共通した認識なんですけど、皆さんは?

佐久間:アナログ派です。もちろんデジタルにもアナログにもよさがあるので、やりやすい方でいいと思いますが、このペンじゃないとダメ、このアプリじゃないとダメというように、こだわりがきついのは本末転倒。どんなツールでもアイデアは出せます。

米光:僕はどちらかというとデジタル派なのですが、みんなでアイデアを出し合うときは、やっぱり紙でしかできない。

佐久間:紙のメリットは俯瞰ができることですね。アイデアをつなげたり、整理したり、広げたりできるのが本当に便利です。

角田:並べて一覧するって、大事ですよね。僕たちの製品で「METHOD」というA6サイズのカードがあるのですが、これを使うと、自分がどれだけ考えていたか、もしくは考えていなかったのかが明るみに出る。

佐久間:日頃の仕事でも、小さめのポストイットにとにかく書き出して、貼ってまとめています。小さいっていう制約があることで、必要な情報を整理して書くようになるので、それはポイントかもしれません。

米光:デジタルだと実体として捕まえられないけど、紙だとこれだけ書き出したんだというのもわかりますから。

角田:アイデアが物体になるんですよね。

青木:部屋を紙が埋め尽くしたときの、仕事したな~というあの感じが、モチベーション上はめちゃくちゃ大事で。

佐久間:昔、会社で配られていた原稿用紙があって、若手の頃はそれにコピーを書いて上司に見せに行くのですが、まずは厚みで判断されるんです。それが思考の量ですから。薄いとやっぱり、リアクションは良くなかったですね(笑)。

    idontknow.tokyo's WORKS

    HINGE
    クリップ付きのペンとコピー用紙を装着して、ひらめいた瞬間にクルッと開くだけ。最高のアイデアを生むための最もミニマルなツール。A4、A5、A6、B5サイズを展開中。

    METHOD
    箱の中には、idontknowメンバーのノウハウが記された「秘伝の説明書」とA6用紙200枚、ロゴ入りサインペンが3本。チームでアイデアを生むための最もミニマルな方法。

    TRIO ELEMENT
    緊張を解きほぐし宣言する勇気を養う最もミニマルなゲーム。

    UPRIGHT
    アイデアを生む環境をつくる最もミニマルなスタンド。

    CUBOID
    「手前と奥とで道をつくる」シンプルなルールのボードゲーム。

    HANDLE
    トートとバックパックが手品のように切り替わる2WAYバッグ。

    SLIT
    差し込めば冊子になる最もミニマルなファイル。

    STACK
    とりあえずを受け止める最もミニマルなトレイ。

アイデアはシャンプーから生まれる?

青木:「METHOD」の特徴は、グルーピングやマッピングを全くしないこと。僕たちの場合は、机の上が埋め尽くされるまで、とにかくアイデアを出す。そうすると最後に、全員が腰が抜けて動けなくなるくらいとんでもない1個が出ちゃう。

治田:「いいね、これ」って、ずっと自分たちで褒め合うやつですね。

青木:特別な輝きを持ったアイデアに至るためには、やっぱり、ただただひたすら出すっていうのが僕たちの答えですね。

米光:アイデアを出し合うときって、やっぱりアナログの方がやりやすくて、オンラインだとうまくいかない。ノイズが足りないのかな。

佐久間:Zoomは発表する場になってしまって、共創するのは難しいですよね。

青木:ノイズといえば、トイレに行って戻ったときに一番アイデアが出ます。

米光:「アイス買って来よう」ってちょっと外に出るとアイデアが浮かぶパターンもありますね。「むちゃぶりノート」は、そのノイズを自動的につくる装置。さっき、idontknow.tokyoの3人は週に1回会っていると言っていましたが、僕にはそういう仲間がいないので、1人でアイデア出しができるように工夫して。

治田:僕らは「METHOD」によくポンチ絵を描くのですが、その絵を見間違えることで生まれる発想もありますよね。カゴを描いたつもりなのに、箱だと思ったとか。それでアイデアが広がるのも面白い。

青木:最近は、あえて下手に描くようにしています。これ虫と人どっち?みたいな。

米光:誤解とかズレで良くなるっていうのはありますね。「東京マッハ」という俳句の会をやっていて、句会では無記名で句を提出して、みんなで選んだ理由を言い合うのですが、つくった本人が「そんないい句だったのか!」って驚くようなコメントをしてくれる人がいるんです。

佐久間:むちゃぶりにしろ勘違いにしろ、脳をかき乱す作業って大切ですよね。脳が違う方向に回転すると、視点も変わりますし。

青木:相手を意識すると一段ステップが上がる感覚があるので、最近では、シュートとパスを分けようという話をしていて。

治田:あっちの方向にゴールがありそうだから、とりあえずパスを出してみる。

青木:会社で働いていたときは、誰がシュートを打つとか、誰がシュートがうまいかを競っていたけれど、今はみんなで。

治田:普通、どうしてもシュートを打ちたくなっちゃうんですよね。

青木:僕らはもう打てるのに、わざとみんなでずっとパスを回してる。

米光:上級者だなあ(笑)。

角田:スパーリングみたいな側面もあるよね。アイデアを投げてどういう反論が来るか、それを楽しみながら鍛え上げる。

青木:「今、逆に嫌なやつになるわ」みたいなことを言ったり。

角田:「あえて言うけど」って反論したり。

青木:アイデアが浮かんだ瞬間って、気持ちいいですよね。あれが好きな人って、別に仕事じゃなくても勝手に始めちゃう。なんか出てるんですかね?

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