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EDITOR'S CHECK

吉村萬壱『CF』ほか、注目のデザインの裏側

BOOK
吉村萬壱『CF』

(徳間書店)

  • 装丁/川名潤

退廃的な作風で知られる芥川賞作家・吉村萬壱さんの新作『CF』(徳間書店)が6月29日に発売された。今作は半国営の巨大企業「Central Factory(CF)」をめぐる群像劇だ。CFでは金銭を払えば誰しも罪の責任を取る必要がない「無化」を行っている。独自の科学技術を用いて、加害者のみならず被害者の苦しみをも取り除くとされる夢のような世界に交錯する人々を描く。

装丁は川名潤さん。巨大な“お化け煙突”が特徴的な都市風景と、ピンク色で大胆に配置された書名と著者名が目を惹くデザインだ。『CF』という謎めいたタイトルは、編集担当の鶴田大悟さんが付けたもの。「CF」自体の企業ロゴもカバーと背に配置し、書籍でありながら会社のPRツールのような仕上がりとなっている。

この企業ロゴが作中でも登場することから、鶴田さんが川名さんに制作を依頼。「白地に真紅のCとFが縦に並び、Cの下のカーブとFの下の横棒とが合体しているデザイン」という文中の描写を忠実に再現した。さらにキーカラーはこのロゴと同じく真紅にする案もあったが、本作の鍵を握る要素である「責任を物質化したピンク色の溶液」にちなんだピンク(CF10019)を選んだ。

「文芸書の装丁は文中に描かれている内容を再現するか、実際には描かれていないものを想像してデザインするかの二択。今回は完全に前者で、圧倒的な企業の姿を描きながら登場人物たちが抱く違和感を想像し、どこか虚構のような世界をつくることにこだわりました」(川名さん)。

カバーを飾るビジュアルは“いかにも健全で爽やかな企業広告”をイメージし生まれたもの。実際の都市風景や空、企業の製造施設などの写真をベースに構成している。空の青にはほのかにイエローを入れ、不自然なほど綺麗な色味に。煙突のサイズも文中の描写より誇張したサイズで配置し、CFの存在感と不気味さを示している。書名の書体は可読性を重視し、SackersGothicを選んだ。「背にもロゴを置き余白を十分にとったので、背の佇まい自体が煙突のようにも見えると思います。帯にある尾崎世界観さんたちの紹介文も含め、装丁から異様な物語に没入してもらえたら嬉しいです」(川名さん)。

PACKAGE
東京美容科学研究所「TO BI KEN」

  • AD/畑ユリエ
  • CD+編集/たなかともみ
  • Pr/髙橋真
  • 撮影/ただ
  • アートワーク/荒牧悠
  • I/小林千秋
  • PRプランナー/武本麻梨絵

化粧品の製造・販売と美容に関する教育事業を手がける東京美容科学研究所(以下、東美研)は2022年6月、同社のスキンケアブランド「ゼノア化粧料」の新ラインとして「TO BI KEN(とうびけん)」を発売した。

同社は1933年の創業以来、美容科学を研究しており、TO BI KENはゼノア化粧料の...

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