静かで穏やか、そしてアヴァンギャルドなデザイン
東京・港区にある「21_21 DESIGN SIGHT」で「Material,or」が開催されている(11月5日まで)。この展覧会のディレクターを務めた吉泉聡さんと話していて、会場構成を手がけた建築家の中村竜治さんの視点に惹かれ、話を聞きに行った。
デザインプロジェクトの現在
4月1日、京都の鍵屋町に「丸福樓(まるふくろう)」というホテルがオープンした。ここはもともと、任天堂の本社社屋だったところ。歴史的建造物を活かしながら、安藤忠雄氏が設計監修した新しい建物を融合させたユニークなホテルだ。
(上から)「丸福樓」の外観、客室401号室「丸福樓スイート」、ゲストラウンジの様子。
館内には18の客室を用意。既存棟では旧本社社屋の建築様式を活かしている。
山内家がプロデュースしたライブラリー「dNa(ディー・エヌ・エー)」。
料理家細川亜衣さんが監修するレストラン「carta.(カルタ)」。
1889年創業という、長きにわたる歴史を刻んできた任天堂は、京都の鍵屋町を発祥とする。鴨川と高瀬川の間に位置し、古い町家が並ぶ閑静なエリアだ。任天堂の創業者である山内家は、ここで株式会社丸福を設立し、花札などの製造・販売を行っていた。鉄筋コンクリート3階建てで、アール・デコ調の意匠が施された存在感のある建物は、1930年代に建てられ、1950年代半ばまで本社として使われていたという。
ホテル名である「丸福樓」は、そこにルーツを持っている。山内家が住居としても使ってきた当時の建物を、未来に向けて良いかたちで残していきたいという意図から、ホテルとして生まれ変わらせることにしたという。
全体のプロデュースを手がけたのは、神戸の「オリエンタルホテル」や伊豆の旅館「おちあいろう」などを手がけたPlan・Do・See(プランドゥシー)だ。客室は、ルーフトップテラスを備えた「丸福樓スイート」や、露天風呂と和室がある「ジャパニーズスイート」など、7つのスイートを含む18室。館内には2つのラウンジがあり、ドリンク類をはじめ、オーダー式の軽食も用意されていて、滞在客は自由に使えるようになっている。
ユニークなのは、山内家がプロデュースしたライブラリー「dNa(ディー・エヌ・エー)」という場も設えてあること。創業家が解釈する任天堂の歴史や独創性を体感できる、ゆったりとした空間となっている。さらに、レストランは...