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クリエイターと未来の顧客を共創 事業開発の進め方

あえて「日本ハムらしさ」からの脱却を目指す2つのD2C事業

日本ハム「Meatful」「Table for All」

日本ハムは2022年3月から4月にかけ、2つのD2Cプラットフォームを立ち上げた。共に事業を開発したのは、Accenture SongおよびDroga5 Tokyo。“日本ハムらしくない”、新たな顔つきのサービスやプロダクトが生まれつつある。

日本ハムが立ち上げたD2Cプラットフォーム「Meatful」と「Table for All」のコンセプト。

固定化した企業イメージを塗り替える

今回立ち上げたD2C事業は、“お肉の新たな可能性を創出する”新ブランド「Meatful」と、食物アレルギーケアに寄り添う総合プラットフォーム「Table for All」。背景には同社の企業理念「食べる喜び」を追求するうえでのマイルストーンとして2021年4月に掲げた「Vision2030:たんぱく質を、もっと自由に。」がある。このビジョンを実現するべく5つの重要課題を設定。そのうち特に「食の多様化と健康への対応」「持続可能な地球環境への貢献」のために立ち上げたのが、今回のD2C事業だ。

Accenture Song(アクセンチュア インタラクティブおよびFjordなどを統合し改称)とDroga5 Tokyoは2020年中旬から日本ハムと対話を重ね、特にシニアクリエイティブディレクター 杉山元規さんはビジョンの策定にも携わってきた(#01)。その延長線上で21年4月頃から、ビジョンを実際にどのような事業に落とし込み“有言実行”すべきか議論が始まった。

日本ハムの新規事業推進部長 高崎賢司さんは事業の種となった同社の課題感をこう話す。「当社は『シャウエッセン』を通じて認知いただいていることが多く、顧客も主婦層の方々という印象が強いと思います。そのようにイメージが固定化していることは、逆に言えば課題でもありました」。実際、日本ハムの1兆円超の年間売上の約6割は精肉が占める。ただスーパーなどではストアブランドとして売られており、“日本ハムのお肉”としては認知されてこなかった。

「企業ブランドをさらに拡大させるには、既存のプロダクトブランドに頼りすぎないことが大切だと考えました。そのための手法もさまざまありますが、まずは当社の強みであるお肉(=たんぱく質)に着目し、もっと自由にその可能性を探ることから始めることに。それはこれまでの“日本ハムらしさ”を良い意味で脱却し、従来の古い慣習などの“常識”を壊しアップデートしていく取り組みでもあります」(高崎さん)。

そこで“日本ハムのたんぱく質”として打ち出すことができ、より自由に消費者とコミュニケーションができる手段としてD2Cに着目。“たんぱく質との出会いを創出する場”として「Meatful」、また“たんぱく質で多様な人をつなぐ場”として「Table for All」の開発に着手した(#02)。

早期に言語化・ビジュアル化をした理由

生まれた事業アイデアを実現する工程においても、“日本ハムらしさ”や“常識”からの脱却をテーマとした。「これまで当社では牛や豚を育てるところから加工・提供に至るまでを内製する“自前主義”でしたが、それは強みでありながら新たなことを生み出しづらいという一面もありました。そのため今回はアクセンチュアさん含め、他者・他社と協業して巻き込みながら進めていくことを大切にしました」(高崎さん)。

そのために、クリエイティブチームは...

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