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ARTS卒業制作レポート

アートディレクター養成講座 卒業制作優秀作品を発表

アートディレクションを多様な視点から学ぶ、宣伝会議「アートディレクター養成講座(ARTS)」。今回で22期を迎えた本講座では、半年以上にわたり講義が行われ、受講生が卒業制作に取り組んだ。「任意のクライアントを設定し、ブランディングデザインをしてください。制作するアイテムは自分で考えてください」という課題を出題。

受講生は、実在の企業、ブランド、店舗などを題材とし制作、植原亮輔さん(キギ)、柿木原政広さん(10inc.)、河合雄流さん(電通)が講評を行った。受講生がクライアントに自主提案をするかのように、企画とクリエイティブをつくり上げ、プレゼンを実施。ここではその中から選ばれた優秀作9作を紹介する。

植原亮輔さん(キギ)

柿木原政広さん(10inc.)

河合雄流さん(電通)

植原クラス 金賞
笠井永充(SHUNBIN)

企画意図

人口減少で将来消えてしまうかもしれない自治体「消滅可能性都市」。その隠れた魅力を再発見し、いつか訪れてみたい気持ちを喚起するルームフレグランスブランド「KAORISM」を企画しました。

「まだ見ぬ日本へ旅する香り」をコンセプトに、その土地ならではの素材や印象的な風景など、地域の豊かな個性を香りに反映したプロダクトです。マップピンの機能をもつシンボルマークや、旅先の絵葉書をモチーフにした箱など、旅を切り口にデザインを展開。さらに、消滅可能性都市を疑似体験できるホテルへとブランドを拡張し、より深く地域の魅力を伝えます。地域課題への意識を高め、ローカルツーリズムなど地域活性化のきっかけとなるブランドを目指しました。

ARTSを受けて

現状をブレイクスルーしたいという想いでARTSに飛び込みました。仕事との両立は大変でしたが、週に一度襟を正してデザインに向き合う大切な時間でした。課題演習は短い時間で本質を伝える良い訓練になりましたし、その場で優秀作が決まるライブ感は刺激的でした。受講生の皆さんと切磋琢磨する中で生まれた新たな繋がり。改めて自分の課題に気付けたこと。そして創る喜びを再認識できたことはかけがえのない経験でした。ありがとうARTS!

柿木原クラス 金賞
樋口怜亜(マッキャンヘルスケアワールドワイドジャパン)

企画意図

コロナ禍でのペットの飼育放棄の問題に取り組みました。SNSでは良い面ばかりが切り取られ、実生活の大変さに直面した時、「思っていたのと違う」というギャップが原因ではないかと考えました。幸せなことだけでなく、大変なことも知ってもらうために、ペットを迎えてから見送るまでのリアルな生活を疑似体験する人生ゲームを制作しました。紙製なので、データをダウンロードして印刷をすれば、どこでもプレイできます。猫や他のペットにも応用可能です。このゲームを通し、ペットを迎える前に一生を共に過ごせるかを考えるきっかけになれば嬉しいです。

ARTSを受けて

アートディレクターとしての自信が持てずにいたときに受講を決めました。講師の方々に共通していたのは、全てのことに圧倒的な熱量で取り組む姿勢でした。それは、講評や質問の返答にも表れていました。この肌感のある講義から、苦手なことばかりに目を向けて悩むより、自分の強みを最大限に発揮することが大切であると気付いたことで、私は自信を持って、アートディレクターと名乗れるようになりました。

河合クラス 金賞
石井里実

企画意図

先日食事中に叔父が目の前で倒れ、AEDを見つけられなかった経験から、市中にあるツールは対応に不足があるとわかりました。緊急時に、よりスムーズに早く確実に見つけられるよう、AEDにWi-Fiを取り付けて存在を共有できる仕組みです。①情報を常に更新/Wi-Fiの時間設定、②現在地から最短ルートで誘導、③119との連携/消防署と状況を共有、④フリーWi-Fiとして開放し、社会と共有・認知向上、⑤企業協力・寄付。デフォルト機能とアプリの二重で、現実的に救助をサポートします。日本はAED設置数世界一でありながら、使用率は4%です。1人でも多く救命できることを願って、企画しました。

ARTSを受けて

私はデザインが好きな気持ちを隠して生きてきました。清水の舞台から飛び降りる思いで申し込み、毎週京都から通いました。結果、やる気に溢れる素晴らしい仲間、温かく見守ってくださる担任の先生、憧れずにはいられない超一流の先生方から多くを学びました。今は「デザインが好きです」と隠さずに言えます。京都、東京で応援してくださった全ての方に、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。

植原クラス 銀賞
芦田佳子(TBSテレビ)

企画意図

「曲辰(かねたつ)」とは岡山県北部の6つの市と町の地域商社で、農産物や加工品の販売、農業者の人材育成などを行う会社です。社名は、職人道具の曲尺の「曲」と、日柄を表す昔の言葉のひとつ「辰」、組み合わせると「農」の字を形づくります。ロゴは実際に曲尺を使い補助線を残した形に仕上げ、会社の農業に対する真っ直ぐな思いを込めました。商品ごとに違う産地名に関しては、ワンポイントでハンコを押すようなカタチをとりました。「古きものから厳選した今も良きもの」は必ず「曲辰印」が付いている、となるようなブランドの展開を意識しました。

ARTSを受けて

デザイナーとして日々の仕事に向き合ってきて、自分の中で「デザイン」や「アートディレクション」という言葉の意味が迷子になっていたので受講しました。講師の方々は、「アートディレクション」の意味をそれぞれの言葉で明確に持っており、毎週受講した次の日から仕事の向き合い方に影響するくらい実践的なお話が多かったです。課題演習は同じ受講者の方から刺激をいただく時間でもあり、実りの多い半年間でした。

柿木原クラス 銀賞
金丸早紀(アドブレーン)

企画意図

個々のパーソナリティや多様性の尊重が進みつつある現代。縁結び祈願のデザインも、性別や思想などにとらわれず、あらゆる人たちの願いに応えるものにしたいと思いました。舞台は縁結び祈願で有名な渋谷氷川神社を想定。縁結びとは自分と誰か(何か)の良縁を願うもの。そして、それぞれが持っている個性はバラバラです。そこで、十人十色にちなみ10色の中から自由な解釈で2色を選び赤い糸で繋ぐ絵馬「十色(といろ)結び」と、毎月行われる縁結び祈願祭の御朱印、お守り、十色結びと神社についてまとめたミニリーフレットを制作しました。

ARTSを受けて

驚き、嬉しさ、嫉妬、悔しさなどなど......自分ってこんなに感情的だっけ?となった半年間でした。講義のある火曜日は、週の中で一番気持ちがシャキッと引き締まる日でした。課題演習ではひとつの課題に対し人数分の答えがあり、視野が広がってすごく刺激になりました。自分には何が足りないのか、そのためにはどうするべきかが見えてきたような気がします。ここで学んだことを実践して良いものをつくれるよう、これからも頑張りたいです。

河合クラス 銀賞
黒田悠

企画意図

地元である北海道北見市常呂町のブランディングをテーマにしました。まず町の魅力を伝えるための、キャンペーンロゴを制作。次にブランディングの一環として、町の新しい象徴的な場所となる「旧カーリング場を利用したホテル」の建設を提案。コンセプトを“カーリングの魅力と常呂町の自然を感じてもらうホテル”とし、名前はカーリング用語である「エイトエンダー」から取りました。エイトエンダーの別名でもあるスノーマンの形を、ホテルと併設予定のカフェのロゴマークに採用。カーリング要素を内装に盛り込むなど、コンセプトからの展開を意識して制作しました。

ARTSを受けて

物事を観察してどう捉え、何を感じるのか。感動したとしたら、なぜ心が動かされたのか。そういうことに日々意識を向けて感性を磨くことが大切なのだと教えていただきました。また、課題で他の受講生の方のデザインやアウトプットに至る過程を垣間見ることができ、大変興味深く非常に参考になりました。とても刺激的でかけがえのない半年間を過ごすことができたと思っています。

植原クラス 銅賞
古林萌実(東急エージェンシー)

企画意図

近年、和菓子は「敷居が高く、自分のためのお菓子ではない」と感じる若者が多いそうです。かつては日常を彩っていた日本の伝統を、もっと身近に感じてもらいたい。着目したのは、同じく日本の伝統である、書道や茶道や華道。和の世界の中で、手を動かし創造する時間は、心に癒しをもたらします。和菓子にこの「創造」という体験価値を与え、新しい楽しみ方を提案したいと考えました。柔らかく心地の良いねりきりで好きな形をつくって食べる。忙しない日々の中に手軽に「心なごむ時間」をおいしく取り入れることができる、ねりきりのパレットの提案です。

ARTSを受けて

一線で活躍されている方々のお話を、半年間、週一で聞いていく中で、「この考え方が好きだな」という自分のものさしや、「この人のようなアウトプットを目指したい」という、クリエイター像が明確になっていきました。そして講師の方に講義後に質問に行くと、本当に皆さま親身に話を聞いてくださり、背中を押してくださったことが日々の励みになっています。受講にあたり応援してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

柿木原クラス 銅賞
加藤美帆(花王)

企画意図

お酒との付き合い方を学べるバーをデザインしました。遺伝的にお酒に弱い人が多いとされている日本人。飲酒によるトラブルを未然に防ぐためには、改めて自分の体質と、それに応じた正しい飲み方を知る機会が必要だと考えました。“BAR HODO HODO”では体質診断と、バーテンダーとの対話を通して、お客さまにぴったりの一杯と飲酒習慣へのアドバイスを提供します。初めてお酒を飲む人にはもちろん、久しぶりにお酒を飲む前のセルフチェックにも。お酒と自分の“ほどほど”ちょうど良い関係を築く、新しいバー体験の提案です。

ARTSを受けて

変化の激しい時代の中、アートディレクターとしての在り方に迷っていた私にとって、講師の皆さんのお仕事ぶりや情熱に触れる時間はとても学びが多く、励みにもなりました。課題制作を通してわかった自分の強み・弱みにしっかりと向き合い、これからの実務に活かしていきたいです。ありがとうございました。

河合クラス 銅賞
狩野史帆(電通テック)

企画意図

古くから性の文化が育ってきたストリップの聖地、浅草ロック座。「観客に非現実的な世界を見せて魅了する」というロック座の魅力は残しつつ、現代の社会情勢や社会問題にも向き合い、バランスを取ることをゴールとしました。性を商品として見ることや、性従事者の社会的なイメージの改革を牽引する存在を目指しています。よりたくさんの人にロック座をエンターテインメントとして楽しんでもらい、女性がかっこよく輝く土台にもなっていければと思い制作しました。

ARTSを受けて

同じ課題に取り組み、それぞれのアイデアやアウトプットの違いに感銘を受けたり、指導や講評をいただいたりといった機会が、仕事を始めてからはなかなかないことに焦りやもどかしさを感じて受講を決めました。ARTSで出会ったさまざまな講師の方々や受講生の方々の話を受け、自分自身が今後どう広告やデザインに関わっていくのか、何がしたいのかを見つめ直すきっかけになったと感じています。ありがとうございました。

※掲載作品は各人の仕事ではなく、全て課題として制作したものです。


第23期アートディレクター養成講座は2022年8月23日に開講します

講座概要
開講日 2022年8月23日
実施曜日 毎週火曜 19:00~21:00
一部土曜 13:30~16:30もしくは18:30~21:30
講義回数 全30回
実施形態 オンライン・オフラインの併催。講義ごとの自由選択制。
定員 90名
受講料 税込 176,000円
お問い合わせ 宣伝会議 アートディレクター養成講座事務局
メールアドレス:arts@sendenkaigi.co.jp

日本随一のアートディレクションを教える学校。それが宣伝会議アートディレクター養成講座です。今年で第23期を迎え、これまで2450名を超える方が受講。修了生の多くがアートディレクターとして活躍しています。単にデザインの表現と技術を学ぶだけではなく、トップクラスのアートディレクターたちの思考のプロセスと判断基準に基づくアートディレクションの方法を身につけていきます。随時、無料説明会と体験講座を実施いたします。詳細は下記までお問い合わせください。

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