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青山デザイン会議

岩崎う大・近谷直之・yurinasiaが見る「広告の可能性」

岩崎う大、近谷直之、yurinasia

専門性を持って活動する他分野のクリエイターにとって、今の広告の世界はどう見えているのか。そんな“裏”の視点が覗いてみたいと、お笑い・音楽・ダンスといったフィールドで活躍しつつ、企業CM・広告の世界も知る3人に集まっていただきました。

お笑いコンビ・かもめんたるとして2013年キングオブコントのチャンピオンに輝き、劇団を主宰するほか漫画・小説も執筆、二階堂ふみさんの長台詞が話題となったSalesforce JapanのCMで脚本を担当した岩崎う大さん。

これまで800本以上のCM音楽を手がけ、テレビドラマの劇伴やライブの音響演出、アーティストのプロデュースも行う作曲家・サウンドプロデューサーの近谷直之さん。

福岡でダンススクール・jABBKLAB(ジャブクラブ)を運営する傍ら、大塚製薬「ポカリスエット」やGUなどのCMの振付や演技指導ほか、自ら出演することも多いダンサー・コレオグラファーのyurinasiaさん。

広告の仕事ならではの面白さや他分野の知見を活かす方法、そこから生まれる化学反応とは?

広告に感じる違和感と難しさ

yurinasia:夫でダンサーのayumuguguと一緒に、福岡で「jABBKLAB」というダンススクールを経営しています。YouTubeやInstagramなどで動画を発信していたのをきっかけにCMの仕事をいただくようになって、今は振付や出演という形で広告の世界に関わっています。

岩崎:僕は「かもめんたる」というお笑いコンビのほかに、同名の劇団もやっていて、脚本の仕事をしたり、そのほかに漫画や小説を書いたり。元々はコンビの笑いに憧れてこの世界に入ったのですが、今のバラエティ番組ってトークがメイン。自分はやっぱり、ネタをやりたい人間なんだということに気付いたというか......。

yurinasia:夫も私もお笑いをよく見るのですが、中でもかもめんたるのコントが好きすぎて、今日は夢のようです。

岩崎:本当ですか?いや、それは嬉しいですね。ただ、今こうやって話しているトーンでもおわかりかと思いますが、お笑い芸人らしくないところがありまして。普通こういう場に芸人が入っていくと、自然と会話を回し始めたりするものですが、たぶん今日はあまりそういうこともしないと思うので、すみません(笑)。

近谷:僕は大学卒業後、CM音楽専門の制作会社に就職して、5年ほどいわゆる「ハウス作家」をしていました。そこで1000本ノックというか、ありとあらゆるジャンルのCM音楽をやらせてもらって。独立してからは、CMのほかに、日本テレビのドラマ『武士スタント逢坂くん!』の劇伴や、全く別の仕事として「鋭児」というアーティストのプロデュースもしています。

岩崎:僕は1月に公開された、Salesforce JapanのCMに初めてつくり手として関わったんです。元々ラフな脚本とコンセプトは決まっていて、二階堂ふみさんのセリフを口語っぽくしたい、もっと面白くしたいという相談だったのですが、いろいろアイデアを出しているうちに、いつの間にか脚本を担当することになって。

yurinasia:私の場合、広告やCMの仕事は、知っている監督さんからか、YouTubeでダンスを観ていいなと思ってオファーされるケースがほとんどなので、いつも自分の感覚で関われている気がします。ただ以前は、「これはちょっと違うかも?」と感じることもあって。

岩崎:その「違う」っていうのは、具体的にどういうことですか?

yurinasia:たとえば、絵コンテだったり、ダンスに入るタイミングだったりが、CMっぽいなあって。これまで私は、本当に自分が好きなダンスを発信してきたので、急にそういうキャッチーな仕事をしなくちゃいけないということに葛藤があったというか。でも、編集されて音楽がついて作品が出来上がると、「あ、こういう変わり方をするんだ」という感動がある。だから、毎回終わったあとには、関わってよかったって思うんですけど。

近谷:その気持ちは、すごくよくわかります。僕もCM音楽の場合は、いろいろなことに幅広く対応できる職業作家としてアサインされるケースが多いので。確かに音楽単体で判断するとどうかなと感じることもあるのですが、クライアントが伝えたいメッセージや全体的な演出の中での立ち位置を考えているんだろうな、と。

岩崎:最近はテレビもコンプライアンスが厳しいし、いろいろな制約にも慣れているつもりですが、CMはその最たるものというイメージがありました。初めての経験だったし、たくさんの人が関わっているので、誰に何を言われるんだろうって。

yurinasia:難しいですよね、広告って。

    UDAI IWASAKI'S WORKS

    Salesforce Japan 「次の世界へ。つながる」 篇 脚本

    二階堂:Salesforceさん?なんの御用でしょう?
    「本当につながってる?」って、
    面白いこと聞きますね。
    心配ご無用。
    我が社はつながりまくっております。
    DXを進めてきたので社員同士もつながってるし、
    クラウドでお客さまとも
    つながらせていただいております。
    まあ、強いて言うなら
    会社の成長とともに増えていくシステム同士が複雑に絡まってしまって
    「つながり」というより......「絡まり?」......
    いや、でも、それってもう
    しょうがないじゃないですか!?

    ♪〜

    S:本当につながってる?

    二階堂:ドア出てきたんだけど......

    ロゴ:customer360

    S:次の世界へ。

    CI:Salesforce

    『ピンクスカイ』(鈴屋出版)
    劇団かもめんたる第3回公演の舞台を加筆修正し、小説化。

    『マイデリケートゾーン』(小学館)
    自身初の漫画単行本。各著名人より絶賛される奇書。

    パルコ・プロデュース2022『スルメが丘は花の匂い』
    2022年7月、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで開幕、大阪ほか地方公演も予定されている。

制約や無茶振りがクオリティを上げる

岩崎:実際、制約が多いというのは、「何でも好きにどうぞ」と言われるよりはつくりやすいんです。CMの場合、尺がめちゃめちゃ短いので、ひとつの短い言葉の中にいろいろな意味を込めなくちゃいけない。そのハードルを越えるのはチャレンジングで面白いし、CMならではのミニマムな美しさもあるなと感じました。

yurinasia:キャッチコピーにゾクッとすることってありますよね。いろいろな人の想いが込められて最終的に決定したコピーって、すごく重たいものなんだろうなと、いつも感じています。

近谷:SalesforceのCMはかなりの長台詞ですが、尺が足りないのにさらに言いたいことを入れないといけないときって、どうやって対処するんですか?

岩崎:たとえば、言葉や語尾の言い方を変えるとか、演じ方を変えるとか。セリフ自体は入れられないけれど、その要素はここで出せますよね、という演出ですね。

近谷:ニュアンスとか表現で足していくんですね。yurinasiaさんは出演もされていますが、そういう苦労ってあります?

yurinasia:私は、そこまで細かく考えているかなあ(笑)。でも、自分が出演するときと振付をするときでは全く違いますね。出演する場合は、なるべく自分のスタイルを崩さないようにしながら、依頼された内容をうまく重ねていく。ただ、つくる側の気持ちもわかっているので、現場の空気を崩さないように意識していますね。

近谷:困るのは「映像に合わせてきっちり音をつくってほしい」とオーダーされて、録音から何から全部準備をして計算してつくっていたのに、あとから映像の方がどんどん変わってしまうこと。1個ズレたらこっちを足せばいい、という簡単な話じゃないんだけどなあって。

岩崎:僕も舞台で音楽を使うとき、ここをちょっと変えれば対応できるだろう、なんて軽く考えることがあるので反省します(笑)。でも、ある意味そうやって専門外のところから勝手なことを言ってもらうのも大事なことなのかなと思うんです。

近谷:そうそう、特に専門家じゃない人の意見って重要ですよね。僕らはついつい「ちゃんと生で録って、いい音質で」なんて考えてしまうけれど、CMを観る人にとってはあまり関係ないことも多い。自分では絶対提案できないし、その瞬間は「なんでこうなるんだ」と思いますが。

岩崎:これは難しいかもとか、言ったらウザがられるかも、なんて我慢をすることでクオリティが下がるなら、無茶振りを乗り越えて最高のものを目指した方がいい。まあそれも、終わったあとだからこそ言えることですけど(笑)。

    NAOYUKI CHIKATANI'S WORKS

    鋭児
    オルタナティブロック、ソウル、ヒップホップ、エレクトロなどをミックスしたジャンルレスな音楽性と、JAMをしながらつくり上げるリアルを追求したライブパフォーマンスが特徴的。プロデュース・マネジメントを担当。

    Endian/CHILL OUT「チルする?無理する?」篇
    音楽プロデュース・作編曲

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