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プロトタイピング発想のデザイン

ジェームズ・ワットとIDEOに学ぶ、大発明が生まれるプロトタイピング

三冨敬太

エンジニアリング分野から生まれた「プロトタイピング」。近年、デザイン思考の分野からも注目を集めている。デザインファームなどを経営しつつ、プロトタイピングの研究と実践に取り組んできた三冨敬太さんが解説する。

ジェームズ・ワットが設計したバランサー付き複動式低圧蒸気機関(バランサーエンジン)。

大発明は「ありもの」の組み合わせから

1765年のある晴れた日の午後、スコットランド西部の都市・グラスゴーで29歳の青年が散歩をしていました。彼は、シャーロット通りから緑地に入る、洗濯屋を通り過ぎたあたりで、ひとつの非常に重要なアイデアを思いつきました。それは、第一次産業革命の推進につながる、機関装置の燃料効率を圧倒的に上げるためのアイデア。青年の名前はジェームズ・ワット、蒸気機関を発明したとされる人物です。

当時の主要な機関装置は「ニューコメン機関」と呼ばれるもので、非常に燃費効率が悪いものでした。このニューコメン機関は大気の圧力で動くため、「気圧機関」に分類されます。彼が思いついたアイデアは、この燃費効率が悪い大気の圧力を用いる方法ではなく、蒸気を別の容器に移動させる「分離凝縮器」という仕組みを用いることで圧倒的に燃料効率を向上することにつながる「蒸気機関」に関するものでした。

アイデア自体は画期的ではあるものの、実現するためには精度の高い鉄のシリンダーやピストンの製作をする必要があり...

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