シャープは「プラズマクラスター」を搭載した商品の出荷数が、世界で1億台を突破したことを機に、2月10日から「Plus Minus Project」をスタート。謎の新人アーティストデュオ「Plus Minus」を起用し、若年層への認知の拡大を試みた。
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「Plus Minus Project」キャンペーンビジュアル。
つっこみどころを用意する
シャープの「プラズマクラスター」とは“プラスイオンとマイナスイオンの力で快適な空気を生み出す”機能だ。「プラズマクラスターはシャープだけ♪」のサウンドロゴでよく知られてきた一方、認知はやや頭打ちの状態だったという。新規の顧客となりうる若年層に届き、店頭での販促にも活用できるよう音楽を用いた企画を、というのが今回の出発点だった。
相談を受けたADK Wonder Recordsは、クリエイティブディレクター/サウンドプロデューサー市川喜康さん率いる、音楽によるブランディングを得意とするチームだ。自身もSMAPのヒット曲『オレンジ』や『Triangle』の作詞・作曲を手がけたことで知られる。市川さんは「歌にすれば伝えたいことがなんでも伝わるというわけではなく、まず①聴きたくなる、次に②つっこみたくなる、そして③参加したくなる、という3つが循環するしくみをつくるのが大切」と話す。
それを元にADKクリエイティブ・ワンのプランナー棚橋直生さんが考えた企画は、「プラスイオン」と「マイナスイオン」の擬人化、アーティスト化。両者が合わさって成立する「プラズマクラスター」の機能の特性と、音楽を用いた企画とをつなげたものだ。「プラス」「マイナス」の姿は人気イラストレーターのゴルさんが描き、「+(プラス)」と「ー(マイナス)」の声は共に声優の梶裕貴が歌い分けた。
「『+』はイケメンボイス、『ー』は弾むような爽やかボイスという設定です。梶さんにお願いしたのは高い歌唱力から。また若い層に圧倒的な人気があり、コアなファンの働きかけから広く文化にできる力をお持ちなのも大きかった」と、市川さん。
また作詞を市川さん、作曲を一青窈のヒット曲『ハナミズキ』を手がけたマシコタツロウさん、編曲を資生堂のブランドCMや映画『溺れるナイフ』の音楽なども担当した坂本秀一さんが担当し、“聴きたくなる”MVに仕上げた。「実際に曲はJーPOPとして通用する素晴らしい仕上がりになりました。ただそれだと②のつっこみどころがなくなってしまう。そこで歌詞がポイントです。あえて、『プラズマクラスター』の機能を直接的すぎるくらいに訴求する内容にしました」(市川さん)。
歌詞の入りは「頼ってくれたら嬉しいなきっと君の役に立てる」と思いやりを感じる至って普通の内容だが、徐々に「空気中に浮遊する菌やウィルスに作用」「浮遊するダニのふんや花粉アレル物質にも!」と様子が変わってくる。「でも曲自体が素晴らしいので、違和感は抱きつつも聞いていただける、というのが音楽をメインにしている僕らの強みですね。『Fly away』からサビに入っていくところが個人的には気に入っています(笑)」と話す。