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DXを推進 デザイン組織のサステナビリティを高める

富士通 デザインセンター

2020年7月、DXビジネス拡大に向けてグループ内のデザイン機能を強化し、企業活動に役立てるために富士通本社内にデザインセンターが設立された。180人が所属し年間で約150のプロジェクトを手がけるとともに、社内にデザイン思考を浸透させるための活動に取り組んでいる。

(左から)富士通 デザインセンター長 宇田哲也さん、デザインセンター フロントデザイン部 小関美咲さん

デザイン思考を社内に浸透

1世紀に迫る歴史を持つ富士通が、企業改革の真っ只中にある。DX時代での生き残りをかけ、改革のカギを握る要素のひとつが“デザイン思考”だ。その推進役となるのは富士通社内のインハウスデザイナーたち。デザイン思考を社内に浸透させるため、デザイン組織も新たにした。

富士通は古くから本社内にデザイナーが在籍していたが、2007年以降はデザイン機能を分社し設立した子会社の「富士通デザイン」が、プロダクトをはじめ商談対応、事業のデザインなど富士通社内のデザイン全般を担ってきた。しかし、デザイン経営やDXビジネスの強化に向け、同社を吸収合併。2020年7月から富士通本体のデザイン部門として再スタートを切っている。

「子会社時代は、事業部と共に企画から市場化までをデザインすることや、受託型で依頼に応じて製品やサービスをデザインする役割を担ってきましたが、デザインセンターでは富士通という企業自体にデザインで価値を生み出すという役割を果たしていきます」。そう語るのは、デザインセンター長の宇田哲也さん。「現代はお客さま自身が自社の課題がわからない状況もあり得る。富士通がお客さまとの並走を目指し、情報を引き出し、課題を見つけ、解決の方向に導くためには、デザイン思考が必要だと考えています」と、組織変革の背景を説く。

デザインセンターは、“ヒューマンセントリック・エクスペリエンスデザイン”という、人が中心となり創造的な価値を生み出す、富士通ならではのデザイン思考のアプローチの伝道者としての役割も担う。2018年入社でデザインセンター所属の小関美咲さんも、「富士通デザイン時代からデザイナーの根幹にある考えで、今は営業とプロジェクトを並走するなど、全社に浸透させるための活動にも注力しています」と話す。一緒にプロジェクトを推進した営業の社員らが、その後、デザイン思考を自主的に取り入れるケースも出てきた。

また、実務でデザイン思考を活用するときの副読本として、富士通がこれまでの実践から得たノウハウなどをまとめたテキストブック「Transformation by Design」を公開。日本国内だけでも約8万人が在籍する社員に対し、さまざまなアプローチでデザイン思考の浸透を図っている。

富士通の実践知が詰まったデザイン思考のテキストブック。

大半が他部署・他社経験者、多様性重視

デザインセンターは180人ほどの人材を抱え、インハウスのデザイン組織としては日本有数の大所帯だ。

デザインセンターの進むべき道を戦略として定め、実行に伴走し成果まで責任を持つ「戦略企画部」、コーポレートブランディング、情報発信など、アセットの開発や流通を広く担う「経営デザイン部」、自らも新規事業の創出に挑みながらも、営業部門と連携しデザイン思考の実践を協働する「フロントデザイン部」、モノとしての製品デザインを強みに、それらを取り巻く体験価値を創造する「エクスペリエンスデザイン部」、事業部門と連携し、ユーザーに寄り添ったUX、UIデザインを共に創り上げる「ビジネスデザイン部」、デザインセンターの事業活動の計画策定と推進を図ることで円滑な事業運営に貢献する「事業推進部」の6部門からなる。

各部門で役割は分かれているものの、フロントデザイン部に所属する小関さんが、「プロジェクトごとに横断でチームを組むことは多いです」と語るように、シームレスな一面もある。所属する社員も毎年数人の新卒採用を行う一方で、他部署、他社経験者が7割を超える。近年ではマーケターやコンサルタント、ソフトウエアエンジニアなど、ビジネスとテクノロジーをデザインと掛け合わせて価値を生み出すスキルを持つ多様な人材も揃ってきた。

宇田さんも2020年に中途入社した。「外から想像していた富士通のイメージとは全く異なり、自由度と自主性が高い。社長の時田(隆仁)はジーンズをはいて働いているし、私のように派手に髪を染めている社員もいる。フラットな組織のため、私を“センター長”と呼んだら100円の罰金が科せられるルールもあります(笑)」と話す姿からも、風通しのよい雰囲気を感じさせる。

小関さんも、「デザインセンターは気になる案件があれば、積極的に手を挙げると参加できるチャンスが得られるし、声をかけてもらいやすいです」と語る。自身もお客さまと向き合う仕事にやりがいを感じ、フロントデザイン部への異動の申し入れがかなうなど、個人の意思を尊重する組織風土となっている。

自主活動でビジネスの種を発見

自由闊達さは社員の自主活動にも反映され、その代表例が「Initiative」という活動だ。携わっているプロジェクトとは直接関係なくても興味があれば取り組むことが推奨されている。宇田さんと小関さんはセンター内の日本酒好きのメンバーとともに“日本酒部”を結成。徳島の酒造を視察するなど、「日本酒体験のリデザイン」に取り組み始めている。自主活動は新たなビジネスの種を見つける意味もある。コロナ禍ではリモートワークが中心だが、オンラインチャットを駆使して日常的に意見を交わしている。

「自主性を大事にしつつ、もちろん自由にしすぎてもいけない。その加減は悩みどころです。ただ、富士通の社員は基本的に真面目。成果は必ず出してくれます」(宇田さん)。

若手社員の活躍も目覚ましく、最近ではコロナ禍でオンラインでの学生インターンを迎える際、新卒1年目のデザイナーがインターン生向けノベルティ企画を提案。制作から配布まで取り仕切るなど、年齢や経験を問わず自主性を重んじる環境だ。

デザインセンターとして3年目を迎える中、「これまでは山登りのガイドである“シェルパ”のように社内を先導する役割だったが、それぞれが独力で山を登っていくような、DXの先導者としての活動をしていきたい」と宇田さん。「2022年の活動は3本柱を考えています。ひとつ目はデザインセンターが主体で、長期の社会課題を見つけること。2つ目は自分たちが手を動かしてものづくりまで完結すること。3つ目はそれらを日本だけではなく、世界中の拠点も含めてまとめ上げることでデザインの価値としたい」と、今後を見据えている。

仲間をつくるデジタルサービス「Buddyup!」デザイン支援。

「銅箔」の抗菌性能を活かしたUX起点の総合デザインサービス(クライアント:古河電気工業)。

「誰もが移動をあきらめない世界」を実現させるためのユニバーサルMaaSアプリ UI設計。

デザインセンターによるオウンドメディア「FACE」では個の想いを発信。

体操競技の新時代にふさわしいデザインを追求した「AI体操採点システム」。

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