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デザインプロジェクトの現在

『精神的な空間』の意味を問う

柳原照弘

柳原照弘さんは、プロダクトから空間まで、幅広い活動を繰り広げているデザイナー。「KARIMOKU NEW STANDARD」や有田焼のブランド「1616/arita japan」、「2016/」など、国内外を含めたクリエイターとともに、つくり手とがっぷり組んだ息の長いプロジェクトを仰ぎ見てもきた。コロナ禍を受け、変わったこと、変わらないこと、あれこれを聞きに行った。

アルルのスタジオの様子。「VAGUE」は「波」の意。

改めて考えた“空間の意味”

コロナによって何がどう変わったかと聞いたところ、「改めて“空間の意味”を考えさせられました」と柳原さん。オンラインによるミーティングは、海外とのやりとりを含め、コロナ禍以前からやっていた。それがコロナ禍によって急進し、空間について深く考えるようになったという。確かにリアルで対面しなくても、PCを介して議論を重ね、仕事のプロセスは進む。だから周囲では、オフィスは必要ないという話をよく聞く。一方、人が集う場に制限がかかることで、店舗やショールームのあり方についても、さまざまな議論がなされている。

では、柳原さんが導き出した“空間の意味”とは何なのか──「“経済的な空間”については、オフィスビルが過剰に増えている中、さまざまな疑問が呈されているのは事実です。一方、いわば“精神的な空間”とでも言える場の大切さに、改めて気付いた人も多かったのでは」(柳原さん)。

言われてみれば、時間を割いて移動し、会議室に集って実施する報告的なミーティングはリモートでいいし、その方が時空間の効率が良いのは間違いない。が、それだけでは事足りないと気付かされるところもあった。リアルな場が持っている空気感や、そこで生まれ、濃くなっていく人やものとのかかわりには、だからこその価値がある。柳原さんは、「自分なりに考えた“精神的な空間”を、多くの人に体感してもらいたいと思い、“豊かな空間”をつくろうと考えた」という。

数々のラグジュアリーブランドは、旗艦店の存在を重視し、コロナ禍でも力を注いでいる。建築やインテリアをはじめ、ブランドストーリーを語るミュージアムやレストランやカフェを併設し、徹底してブランドの世界観を表現するところに力点を置いているのだ。これは...

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