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広告少年

コピーってなんだろう?

栗田雅俊、小川祐人、松田翔太、吉兼啓介

広告少年の2人が広告のプロフェッショナルに根掘り葉掘り疑問をぶつけるシリーズ。前回のアートディレクションに続き、今回はコピーについて電通の栗田雅俊さん、小川祐人さん(左)に話を聞きました。

CMを立体的にするコピー

吉兼:前回のアートディレクターの回に続き、今回はコピーライターのお2人にゲストにお越しいただきました。

栗田:電通でコピーライターやりつつ、CMプランナーとかもやっております。松田さんとは以前、明治「XYLISH」のCM「いいキスをしよう」や、その時にボツとなったCM企画をアニメにしたWeb動画シリーズなどでもご一緒しています。

松田:「いいキスをしよう」は、キスをしようとする瞬間を撮るという撮影でしたよね(笑)。

栗田:はい(笑)。相手の方にGoProを付けていただいて撮影をしたんですが、その時に感動したのが、松田さんが撮影前に自主的にGoProを買って距離感とかを試したとおっしゃっていたんです。一緒につくってくださる演者さんなんだと驚きました。

小川:僕も同じく電通でコピーライターをしています。今日は僕だけ松田さんと接点がなくてどうしようかと思っていたんですけど、さっき同い年だということがわかり安心しています。

松田:この「広告少年」は、僕らが好きなテレビCMってどんなものだろう、どうしたらつくれるんだろう?というところから始まりました。で、CMを見ていると、必ずといっていいほど締めくくりの一言、コピーが出てきますよね。それがあるのとないのとでは、CMの印象が大きく変わってきます。だからそれを考えている人たちに話を聞いてみたいと思っていたんです。

吉兼:CMを見る人からすると、締めのコピーは最後の刻印のように感じられるけれど、つくる順番は逆なんですよ。まず言葉から開発して、どんな絵でどういう音楽にしようかと。コピーは最初の1歩目なんです。

松田:実は始まりをつくっているということ?

小川:たしかに。最初にコピーを考えることは多いですね。

吉兼:でもお茶の間で見るときは最後っていう。めちゃくちゃかっこいいですけど、そのぶん大変な役目だなと思います。

松田:相当悩むものですか?

栗田:基本的には最初にクライアントさんにCM企画を説明する時に、「このコピーでいきましょう」と提案するんです。でも実際に映像をつくる中で「あれ?これじゃないかも?」と思い直す瞬間があるんですよ(笑)。そこからもう1段高みにいけるかどうかの勝負が始まったりします。

それと絵は感覚的なところなのでお任せになるところもありますけど、言葉は誰しも使えるものなので、コピーを逆提案されるなんてパターンも(笑)。その中で折り合いをつけたり、言葉ならではの闘いは結構ありますね。でも制作の最終段階まで粘れるところでもあるし、言葉によって絵も見え方が変わってくるのが面白いところだと思います。

松田:なるほど。

栗田:以前松田さんとご一緒したトヨタ自動車「KINTO」のCM(「定額なる一族」/2019年公開)でいうと、車に対して固定観念を抱いている役の佐藤浩市さんに重なる形で、ラストに「まだクルマ買ってるんですか?」というコピーがスーパーで入ります。あれは無くてもCMは成立しますが、あったほうが広がりが生まれる気がして。

松田:その客観的な一言のおかげで、一気に立体的になりますよね。登場人物たちの交流とは別の、第3の視点が生まれるというか。

小川:タイトルが最後に出る映画だと、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)が印象的でした。あれはコピーだなと思いましたね。

松田:タイトルがコピーになっているのですね。僕が小学生の時に見た日清カップヌードルの「hungry?」(1992年公開)は今でも新鮮です。当時あのコピーを見て、「お腹空いてる!空いてるよ!」という感じで反応していました(笑)。

栗田:聞いた話なんですけど、最初は「お腹が空いている人はいませんか?」というコピーだったらしいんです。それが「hungry?」になったみたいで。素材の持つ印象やスピード感までガラッと変わりますよね。

松田:面白いコマ撮りだなと思っていたら、急にカップラーメンに持っていかれるというか。

栗田:理屈を超える感じがあって、なかなかああいうコピーは書けないですね。「『hungry?』みたいなの書いてよ」ってたまに言われるんですけど(笑)。

小川:「Think different.」みたいなの、とも言われますよね(笑)。でもそういう、一見シンプルなのにきちんと腹落ちするコピーが一番つくるのが難しい気がします。

トヨタ自動車「KINTO」のテレビCMシリーズ「定額なる一族」、「そのお考え、お古いかと」篇(2019年)。

ミクロのコピーとマクロのコピー

吉兼:ちょうど過去のCMの話になったので聞きたいんですが、お2人が影響を受けたコピーって何ですか?

小川:僕はひとつは、富士ゼロックス「ビューティフル・キャンペーン」(1970年)のコピー「モーレツからビューティフルへ」ですね。最初はよくわからなかったんですけど、当時流行していた「モーレツ」という言葉に一石を投じたのがパンクなメッセージだなと思って。

松田:僕らまだ生まれていないですよね?

小川:そうですね。

吉兼:でもそのコピーの感じは、今の小川さんの仕事に表れていますよね。ヤマトグループの「未来より先に動け。」(2020年公開)も、コピーで価値転換をしようとしている人だなぁと思っていたんです。リアルタイムで影響を受けた広告はありましたか?

小川:「タイは、若いうちに行け。」(タイ国際航空/1995年公開)ですね。僕は大学4年生の就活が終わった頃にこれを見て、タイに行ったんですよ(笑)。あ、タイ行かなきゃ、って。ドンキでリュックを買って、初めての海外旅行にひとりで行きました。これに影響を受けてか、命令口調のコピーがけっこう好きで。「未来より先に動け。」というコピーも、もしかしたらそこに影響を受けてるのかもしれないです。

栗田:いいですよね。僕もタイ行きました(笑)。僕が印象に残っているのは、サントリー「NEW オールド」のCMのコピー「恋は、遠い日の花火ではない。」(1994年公開)です。田中裕子さん演じる自転車が故障して困っている女性がいて、その人に「あの、直しましょうか?」と声をかける大森南朋さん演じる男性。「ごめんね、ツイてないねえ」と話す田中さんに対し、「や、俺ツイてますよ」と大森さん。

ドキッとする田中さんの眼差しに...

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