音楽などのエンターテインメント領域を軸にした企画制作を手がけるSTARBASE。クリエイティブ事業とエージェント事業のほか、近年は大手企業のブランディングプロジェクトに従事。従来の広告の枠組みにとらわれない、若年層にリーチする企画を実現し続けている。
「楽しい」を徹底的に追求する会社
2021年9月、NTTドコモは自社の技術を活かして新たなエンターテインメントを若年層に届けるプロジェクト「Quadratic Playground」を始動した。横田真悠・seid-ai・窪塚愛流ら次世代を担う俳優らが出演するWebムービー、YOASOBIの新曲『大正浪漫』の公式ミュージックビデオとその360度映像、VRでプロのサッカーのプレーを体感できる「FEEL THE SENSE of 内田篤人」など、映像・音楽・スポーツの分野からコンテンツを届けている。
プロジェクトのタグラインは「正解よりも、楽しいを答えに。」。従来のドコモのパブリックイメージを覆すかのようなこの企画を提案したのが、STARBASEだ。2007年にCEOの日髙良太郎さんが創業した音楽プロデュース会社から分社化し、2017年に設立された。
日髙さんはこれまで国内外で菅田将暉やBTS、ディズニーなどの楽曲制作やプロデュースのほか、経済産業省による被災地支援プロジェクトなど公的な事業にも関わってきたが、大手企業のブランディングプロジェクトに携わる機会が広がっている。
「『ドコモは真面目ではあるけれど、面白くない』。こんな失礼な僕らの投げかけから、プロジェクトが始まりました。よく話を聞くとドコモは5Gをはじめ世界随一の高度な技術を持ち合わせていながら、その価値が一般に広く伝わっていない。だからこそ僕らが得意とするエンターテインメント、コンテンツの力を最大限に活用できるのではと考えました。それは何らかの“正解を探す”というより、エンドユーザーにとっての“楽しい”を徹底的に追求することでもある。そういった思いを経営陣の皆さんに理解いただき、実現につながりました」。
2019年からはトヨタ自動車とともに車の新しい楽しみ方を提案するプロジェクト「Drive Your Teenage Dreams.」を実施している。音楽フェス「SUMMER SONIC」でブースを出展したほか、トヨタのロゴが入った公式ファッションアイテムや雑貨のマーチャンダイジングなどを手がけ、現在も第二弾を展開中だ。自社で世界中に日本のカルチャーを発信するストア「YEN TOWN MARKET」も運営し、これらのグッズを販売している。
カルチャーマーケットの視点に強み
NTTドコモ、トヨタのプロジェクトに共通するのは、STARBASEが「カルチャーマーケット」と呼ぶ若年層にリーチさせる企画であること。「カルチャーマーケットとは、現代的な音楽やアート、ファッションといった先端的な分野への感度が高い人たちのこと。企業のブランディングにおいて、これらの分野との融合が課題となっています。STARBASEは音楽業界をルーツとしている点が強み。コンテンツも物販も“有料でも手に入れたい”と思ってもらえる高いクオリティにこだわりがあります」。
従来の広告制作のあり方に一石を投じたいという想いもある。STARBASEではビジョンを持った経営層に直接提案をすること、そしてコラボレーションをする事業に関わる当事者たちと直接、議論をすることを大切にしてきた。たとえばNTTドコモの企画では、同社のVR技術のスペシャリストたちと密に話し合いを重ね、360度映像や表現の可能性を追求していった。「そのプロセス自体にこそ価値があり、これからも継続的に新たなコラボレーションを生み出していけたら」と日髙さんは振り返る。
「広告のKPIとして、必ずしもリーチの量や規模が絶対とは限りません。クライアントの満足度を高めることは重要ですが、最終的にエンドユーザーの心に響く強いコンテンツになっているかを見極めることが必要。従来の広告は、ともするとエンドユーザーの目線を見失っているのではと思われるケースも散見されます。僕らは日常的にカルチャーマーケットに触れているからこそ、その視点から逆算した提案ができるという点が強みになっています」。
なお、STARBASEという社名には「個性豊かな才能のある人たちが集まる基地に」といった思いが込められている。「YEN TOWN MARKET」も、数年かけて常設店舗の設置へ向けて準備中だ。今後は多様な業界でブランドの価値を高めるプロジェクトに関わっていきたいと考えている。
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