2021年10月、衆議院議員総選挙を前に、「VOICE PROJECT」が注目を集めた。「広告でも政府の放送でもない」形で社会へメッセージを伝えようと試みた、クリエイターたちの狙いとは。

コピーは三井明子さん、ロゴは柿木原政広さんが手がけた。ロゴの依頼時は、「私を主語にすること、それが一番目立つうえで、声をコンセプトにしたい」(関根さん)と伝えた。
「投票はあなたの声だ」
「これは広告でも政府の放送でもなく、」「僕たちが僕たちの意思でつくった映像です。」「僕たちの投票への思いを話します。」──2021年10月16日に公開された動画「VOICE PROJECT投票はあなたの声」は、こんな言葉から始まる。二階堂ふみ、コムアイ、Taka(ONE OK ROCK)、小栗旬といった総勢14人の著名人が、自らの言葉で投票への考えを語る。それはどの政党に偏ったものでも、政策についての主義を述べるものでもなく、ただ「~~だから、私/僕は投票します」と、投票にのみ焦点を絞ったもの。全員が共に発する「投票はあなたの声だ」という言葉で締めくくられる。
「特定の何かを訴求する広告でも、政府からの要請でもなく、出演者たちが自分たちの言葉で自分たちの投票についての考えを述べる。そんなものにしたかった」と話すのは、映像作家・映画監督 関根光才さん。「VOICE PROJECT」の発起人のひとりだ。
近年、日本における選挙の投票率が減少傾向にあるのは周知のとおり。1967年の衆議院議員総選挙では全体の投票率は約74%、20代では約67%だったのが、2017年の選挙では全体で約54%、20代では約34%に。20代はほぼ半減している。
「VOICE PROJECT」はこのような状況の中、10月31日に投票日が設けられた今回の衆院選を前に、投票率の上昇を目指して企画された。関根さんのほか、Spoon.のプロデューサー 菅原直太さん、同 大越毅彦さんも発起人に名を連ねる。
「投票率の低下については、今回の発起人となったメンバーの中でずっと課題として話してきました。そんな中で、僕自身も関わっている社会表現のチーム NOddIN(ノディン)が立ち上げた『投票所はあっち』プロジェクトが、今年4月の参院選で広島のメンバーのアクションにより全国的な拡がりを見せていました。これは街中で矢印を持って投票を促し、本来の政治を市民の手に取り戻そうとする取り組み。僕らも映像に携わる者として、まだまだできることがあるのではないかと考えていきました」。
“誰かを自分の価値観でジャッジしない”
7月末頃に企画が立ち上がり、8月から9月にかけて制作を進めた。「著名な方にスピーカーになってもらって何かを呼びかける企画、というのは誰でも考えつくものだと思うんです。でも今回は、僕らの“投票に行ってほしい”という主張を伝えてもらうのではなく、出演者個人の考えを話し、それを見た人の中に...