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「心の距離の伸縮が『関係』となる」2年目を迎えた歩く芸術祭

MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館

奈良県の奥大和エリアで開催中の「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。自然の中を歩いて、各地に展示されたアート作品に接することで、自然や自分自身の身体を実感する機会を創出する「歩く芸術祭」だ。初開催だった昨年に続き芸術祭のプロデューサーを務めるのは、齋藤精一さん。2年目を迎え、見えてきたこととは──?

吉野、天川、曽爾、各エリアの作品。(左上から)黒川岳「Sensory Activities(Yoshino grass)」、上野千蔵「『うつしき』-みずいろ-」、岡田将「無価値の価値」、コースの各所に本を散りばめる取り組み「森の中の図書館」。/Photo:中森一輝

自身や自然と向き合う場に

コロナ禍を背景に生まれ、今年で2回目の開催を迎えた「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。昨年に続き芸術祭のプロデューサーを務めるアブストラクトエンジンの代表取締役 齋藤精一さんによると、奈良県庁から直々に相談を受けたのは2020年の6月頃のことだ。「奈良県庁の奥大和の移住交流担当の方から、コロナ禍で経済が落ち込んでしまっている中で、地域を元気付けられる取り組みが何かできないか、とご相談いただいたんです」と話す。

芸術祭という形にしたのは、人間の根源的な問いと向き合う場を創出したいという想いからだ。

「コロナ禍でStay Homeが提唱される中で、皆さん家の近所を歩く機会が増えましたよね。そういった行動の小さな余白のなかで『人間とは?』『自分とは?』『働くとは?』など、根源的な問いを持つことが増えたと思うんです。そんな問いに、情報に追われない環境でじっくりと向き合える機会をつくりたいと思っていました。芸術祭にしたのは、アートは時に自身を客観視するためのレンズになるからです。そして自然の中に配置された作品を見ていると、段々自然そのものが作品のようにも思えてきて、自然について考えることにもつながります。美術館に足を運ぶのも難しくなりアートと触れる機会も減っていましたし、この企画によってアーティストへのサポートにもなればと考えました」。

心の距離の伸縮=“関係”すること?

芸術祭の名称にもなっている「奥大和」とは、山岳地帯や高原が広がる奈良県の南部と東部のエリアを指す言葉だ。そのなかの吉野(よしの)町、天川(てんかわ)村、曽爾(そに)村の3エリアが「MIND TRAIL」の舞台となっている。それぞれに森(吉野)、水(天川)、地(曽爾)とテーマを設け、3~5時間かけて歩く鑑賞コースを用意。コース沿いに、13~15種の作品を配置した。

各コースのアーティストをセレクトするキュレーターを務めたのは美術家/奈良県立大学准教授 西尾美也さん(吉野)、アーティスト 菊池宏子さん(天川)、写真家/アーティスト 西岡潔さん(曽爾)。それらを統括する横断キュレーターを『ソトコト』編集長 指出一正さんが務める。エリア横断キュレーターは今年から設けた役割だが、その経緯を齋藤さんはこう説明する。

「奥大和地域を元気にするMIND TRAILの目的のひとつとして、当初から『関係人口の創出』を掲げていました。ただ昨年は実施までの時間が十分になかったこともあり...

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