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地域の魅力を発見する クリエイター参画のまちづくり

人口約1000人の限界集落にできた地域再生のためのコンビニ

未来コンビニ

2020年4月、徳島県の県境に位置する那賀郡那賀町の木頭(きとう)地区に、「未来コンビニ」がオープンした。人口約1000人の限界集落に、どうしてコンビニが?

2020年4月にオープンした「未来コンビニ」。

子どもの「未来」のために

「未来コンビニ」は、床面積約187平米(102畳)の施設。一般的なコンビニ同様、食品や日用品のほか、土産物コーナー、カフェやイートインスペースも備えている。営業時間は8時から19時まで。木曜は定休日となっている。

“未来”と名付けられたのは、地域の子どもたちの未来に向けた場所であるためだ。最寄りのスーパーまで車で1時間もかかるこの地区では、触れる情報も極端に限られてしまう。子どもがさまざまな体験を通して文化的な刺激を感じ、創造性を養えるような場所に──。そんな願いを込めて設計された「未来コンビニ」では、絵本や駄菓子コーナーを用意したり、昔の地域の展示を設けたり、近隣地区から小中学生が訪れて村の未来について議論を交わしたりと、さまざまな取り組みが実施されている。

「未来コンビニ」の仕掛け人は、自身も木頭出身の藤田恭嗣さん。東京で東証一部上場企業を経営する傍ら、故郷の活性化のために2013年以降複数の会社を立ち上げ、事業を展開してきた。木頭ゆずの栽培・製造加工販売をする「黄金の村」のほか、17年にはキャンプ場「CAMP PARK KITO」の運営をスタート。同年に設立したのが、街づくりをデザインの視点から推進するKITO DESIGN HOLDINGSだ。同社の傘下が「未来コンビニ」を運営している。

「地方に足りないものは食・文化・教育の3つだと思っています。木頭ゆずの栽培を中心とした農業をベースに、その3つを満たすための取り組みを続けています」と藤田さん。

「各方面で事業を展開していますが、まずは木頭を知ってもらい、外から人に訪れてもらう必要がありました。閉鎖した町営キャンプ場をフルリノベーションしたキャンプ場は人気を呼び、事業も軌道に乗ってきています。そこで、来訪者に最低限の利便性を提供するため、また地元の買い物環境改善のためにコンビニをつくることに。未来コンビニは子どもの未来のためのものである一方、木頭プロジェクトを次のステップに進めるための要の計画でもありました」と説明する。

徳島県の南部に位置する那賀郡那賀町の木頭地区の風景。

「未来コンビニ」の外観。横に長い構造が特徴。ロードサイド側の外観には、デジタルクロックが設置されている。

自然と融合する建築デザイン

藤田さんが掲げたデザインコンセプトは「世界一美しいコンビニ」。全体のクリエイティブディレクションを手がけたのは、KITO DESIGN HOLDINGS 取締役/クリエイティブ・ディレクター 鵜野澤啓祐さんだ。「子どもたちのクリエイティビティを刺激する『世界一美しいコンビニ』のためにはどうしたら、と。初めて木頭に行ったとき、溢れんばかりの自然と満天の星空に、まだ日本にもこんな場所があるのかと感動したのを覚えています。その自然との共生を軸にデザインを構築しました」。

コクヨのファニチャー事業本部と共に...

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