デザイナーの活動領域は無限だ。アディダス、ナイキなどのアートディレクターを経て、現在は東京大学生産技術研究所に所属する山崎みどりさんがデザインと周辺領域の融合について解説する。
あなたのデザインは本当に良いですか?
今回は、若いクリエイターの方へのメッセージを書く回だとずいぶん前から決まっていたのですが、この連載を読んでくれる方のために、誰でも確実に役に立つことを、とすぐには決められず、長い期間考えていました。そして悩んだ末、この質問をお渡しすることにしました。「あなたのデザインは本当に良いですか?」。
……ディスってる?と気分を害してしまったら申し訳ないのですが、否定しているわけではないのです。日々、自分が制作したデザインに対して良し悪しを判断すること、つまりデザインの判断基準を身につけることが、デザインの上達には一番の近道です。でも、私はこれが一番の悩みでした。昨日デザインをほめてくれた上司は、今日来たクライアントの修正依頼で私を責めるし、修正したらクライアントが元の方がいいと言うのです。
いつも私たちを惑わす「常識」というコンセプトは、実はその時々のテクノロジーの限界と慣習で仮設定されている場合が多々あります。そしてその仮のルールだけを、デザインの絶対基準だと信じている人もいます。また現在テクノロジーの進化で他分野とのオーバーラップが発生しています。ある分野ではOKでも、他の分野ではNGなのに、そのオーバーラップの中で、みんなが同じ位置に立ち、みんなが違う意見を持って、みんなが正しくなっているのです。
以前は対立をつくることによって問題解決の先延ばしをして...