菅付雅信さんとは、ひょんなご縁でお会いすることに──優れた編集者として仰ぎ見てきた方であり、幅も奥行きもあるお話に魅せられた。去年立ち上げたカルチャーマガジン『ESP Cultural Magazine(以下、ESP)』もユニークな存在。創刊から今にいたる経緯、これからの雑誌のことなどをうかがった。
世界に向けたカルチャーマガジン『ESP Cultural Magazine』
菅付さんが率いるグーテンベルクオーケストラのオフィスは、東日本橋のビルの一角にある。扉を開けると、大きな書棚にびっしりと、壁面には床から積み上げた書籍が柱のように何本も──書物や編集に寄せる愛着が充ちていて、温もりのある空気が心地よい。『コンポジット』(報雅堂)や『インビテーション』(ぴあ)などの編集長を務めてきた菅付さんは、2020年12月に『ESP Cultural Magazine』を立ち上げた。創刊号の特集では「whole earth government」を掲げ、既に2号まで発刊されている。今は3号目の編集真っ最中だという。
どういう経緯で、このユニークな雑誌は生まれたのか。そもそもは、ある企業のコンサルティングを行う中で、自らのメディアを持つことで、海外の第一線の知見と人脈を駆使したコンサルティングを行おうという意図だった。そのクライアント企業がグローバル展開していることもあり、国内外に向けたメディア=雑誌にしようと。その後、広告会社も出資して加わることになり、クライアント企業が主な資金を提供し、広告会社とグーテンベルクオーケストラの2社でこのための新会社を共同出資して立ち上げることになった。が、コロナ禍で緊急事態宣言がなされ、プロジェクトそのものが止まってしまったという。
「僕の中では、コロナによって社会構造が大きく変わっていきそうという予感みたいなものがあり、出版するなら今と判断したのです」と菅付さん。米国ニューヨークを起点とした一極集中のメディア状況に対し、菅付さんは以前から疑問を感じていた。「世界市民的とは何か?」という問いに対し、多様な視点から発信しようと考えたのだ。日本発世界へという意図を込め、全文英語で表現され、80カ国を超える寄稿者がいる。