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ブランドの物語を紡ぐクリエイターの思考とプロセス

何度も試したくなる豊富なシナリオ

石川コンピュータ・センター「君のやる気と相思相愛」

石川コンピュータ・センター(ICC)は昨年12月、リクルーティングを目的としたシミュレーションゲーム「君のやる気と相思相愛」を公開した。無数に用意されたシナリオはどのように考えられたのか。

石川コンピュータ・センターのリクルーティングサイト「君のやる気と相思相愛」。

「就活と恋愛は似ている」

ICCは石川県金沢市に本社を置く、さまざまなITサービスを展開する企業だ。自治体の業務効率化のツールや医療現場での電子カルテシステムなど、多数のソリューションを提供している。都内や名古屋、大阪などに事業所を有しているものの「地方の優秀な学生は首都圏に流出してしまうため、新卒の獲得に課題を抱えていた」と、同社 管理本部 川本直克さんは話す。

「普通のアプローチでは学生は振り向いてくれないとこれまでの経験でわかっていました。そんな中で数年前、電通の中尾孝年さんが手がけた話題性のある事例の数々を知り、ぜひこの方にお願いしたいと自分で連絡先を探して連絡しました」(川本さん)。

話を受けた中尾さんは、ICCの現状を聞き、こう考えたという。「事業内容や規模感は東京に本社を置く企業と比べて遜色ないんです。人を大切にされる社風も素敵だし、実際僕に声をかけてくれるようなチャレンジ精神も盛ん。でもそれをそのまま伝えても学生には届きません。面白いことをやっていると口で説明するのではなく、実際に面白いことをして学生に体験してもらうことで、興味を持ってもらえると考えました」(中尾さん)。

そうして制作されたのが、今回のWebサイト「君のやる気と相思相愛」。ユーザーの選択によって物語が進む、恋愛シミュレーションゲームのような仕組みになっている。「ゲーム形式にしたのは、学生に親しみを感じてもらうため。IT関連サービスという業種だけで、学生には難しそうと思われてしまいかねません。だから技術の力を用いたゲームに落とし込むことで、企業の特性や仕事の楽しさも合わせて届けられるかなと」(中尾さん)。ゲームという前提の中でも、恋愛シミュレーションゲーム方式にしたのは「就活は恋愛と似ている」という考えからだ。

「企業と学生が徐々に互いを理解していって、マッチングを目指す。それってまさに恋愛と同じプロセスですよね。それに自然と会話が生じるこの形でなら、説明的でなく、また嫌みなくICCのことを紹介できると考えました」。登場するキャラクターは全て実際の社員がモデルになっており、それぞれの声も社員がナレーターを務めたというから驚きだ。社員訪問をしているかのような親近感を感じさせる役割もある。

中尾孝年さんが書いたゲームの脚本の一部。

面白さと職種の理解を両立

ゲームのシナリオは、まずICC側からサイトで...

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