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ブランドの物語を紡ぐクリエイターの思考とプロセス

「答え」を積み重ねて物語を紡ぐ、mountのWebデザイン

mount

企業の物語を、Webサイト上ではどう伝えればよいのだろう?日々無数に公開されるWebサイトの中で任天堂創業家の「Yamauchi No.10 Family Office」やポーラ「2029年ビジョン」など企業の意志を確かに感じるサイトを制作するWebデザイン会社 mountの2人に、同社ならではの制作の秘訣を聞いた。

任天堂創業家・山内家一族の「Yamauchi No.10 Family Office」のWebサイト。全体では、山内家の脈々と続くストーリーを四季で表現している。

ヒアリングを徹底し、「わからないままにしない」

キャンペーンサイトやプロモーションサイト、ECサイトなどさまざまなWebサイトを企画・制作しているmount。クライアントの想いをサイトのデザインに落とし込む上で最も大切なのが、「徹底したヒアリング」だとアートディレクター 米道昌弘さんは話す。

「mountはクライアントとの直取引の仕事が約7割を占めますが、広告会社経由の場合でも、まずは担当のメンバー全員でクライアントに話を聞きに行くところから始めます。知らない業界も多く“素人丸出し”なこともありますが、そうすることで『誰にサイトを見てもらいたいのか、何を理解してもらいたいのか』という“答え”を自分たちなりに出すのが大切です」。大まかなテーマは依頼の段階で既に決まっていることも多いが、細部まで理解し自分たちなりの答えを出さないと、ユーザーが実際に触れるWebサイトに実装することは難しいと言う。

「ヒアリング段階でもらえる資料は全て目を通して、何が大事かを自分たちで抽出するんです。情報が多すぎて混乱することもありますが、それはヒアリングが足りないから。“わからないままにしない”というのは全員が意識しているポイントです」と、テクニカルディレクター 岡部健二さん。依頼時の「前提」に安住せず、自分たちなりの答えを出す。だから基本的にプレゼンで提案するのは1案のみ。「僕たちの答えはこれです」と提示するのがmountのやり方だ。

実際、任天堂創業家である山内家が2020年に資産運用などを目的に設立した「Yamauchi No.10 Family Office」のWebサイト(21年4月公開)はどのようにつくられたのだろう。はじまりは、任天堂を世界的ゲーム機器メーカーに押し上げた3代目山内溥社長の孫であり、同オフィス代表である山内万丈さんからの依頼だった。

「仕事を正式にお受けする前の段階でヒアリングに伺った際、山内さんの凄い熱量を感じました。でも全く知らない業界のことでわからない部分も多く、『もう1回話を聞かせてください』とお願いし、結局2時間ほどのヒアリングを4回させていただいています。結果的にそこに一番時間をかけましたね」(米道さん)。ヒアリングを続ける中で米道さんたちがサイトを通じて伝えるべきだと考えたのは、創業時から受け継がれてきた任天堂の挑戦や創造の精神、それを未来に伝えていきたいという山内さんの使命感。それらを明確にした上で実際にサイト制作に取りかかることになった。

「山内家の想いを伝えるには、力強い言葉が必要だと考えました。そこで企業の想いをまっすぐに言葉にするのが得意なコピーライター 渡辺潤平さんに依頼。『挑戦と、生きていく。』から始まる一連のステートメントを書いていただきました」(米道さん)。ビジュアルはそのステートメントを軸に、任天堂の歴史や創造性をどう表現し、実装するかがカギとなった。

「当初は平面の表現を考えていましたが、チームで意見を出し合う中で、挑戦し続ける姿勢や創造性を表現するために、立体にしたらどうだろうという案が出ました。そこで全ての要素を初期のファミコンのような8ビット風のボクセル(voxel)という立方体の単位で構成することに。立体的な様子が伝わるよう、斜めに進むサイトにしました。同社の歴史を感じられるよう、ステートメントの周りには四季を意識したさまざまなオブジェクトを配置しています」(米道さん)。

オブジェクトの数は全部で270種類以上。専用の制作ツールをつくり、それぞれの形や動きをパラパラ漫画のように一つひとつ組み立てていった。スマホ版・PC版で配置が異なるため、「途方もない作業だった」と米道さんも苦笑い。太陽や花がニョキニョキと出てくるポジティブな表現や、反対に雷が落ち火を噴く恐竜が出てくる物々しい雰囲気のものもある。企業の歴史には山あり谷あり。その紆余曲折を見事に表現した。

専用のオブジェクト制作ツール。側面(画面左上)・真上(右上)・正面(右下)からそれぞれボクセル(小さな四角の単位)を足したり引いたりすることで形をつくり、左下に完成形が映し出される。パラパラ漫画のように動きもつけられる。

ページを拡大すると全ての要素がボクセルでつくられていることがわかる。

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