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子どものための文化施設「こども本の森 中之島」

幅允孝(BACH)

「こども本の森 中之島」は、2020年7月のオープン時から気になっていたところだ。本に囲まれた子どもたちが、ここでどのように過ごすのか。本の魅力をどのように伝えているのか──。2021年7月には岩手県遠野市にもでき、次は兵庫県神戸市のオープンが控えているという。全体のクリエイティブディレクションを手がける幅允孝さんの話を聞いた。

2020年7月に開館した「こども本の森 中之島」。大階段で自由に本を読む子どもたちの姿も。©伊東俊介

まっさらな心に語りかけるものが詰まった豊かな本棚

ひとつのテーマのもとに、本をセレクトして配する仕事は、今でこそ割合とポピュラーになっているが、幅さんはその途をつくった人だ。最初にお会いした時、そういう仕事もあるのだとちょっと驚いた。が、考えてみれば、服のセレクトショップに近い。その分野の過去と未来に造詣があり、センスを問われる役割と感じたのを覚えている。

その後の幅さんは、本の周辺に留まることなく、クリエイターとチームを組んで場とコンテンツを結ぶクリエイティブディレクターとして、数多くの仕事を手がけている。

「こども本の森 中之島」のプロジェクトは、どんな内容なのか。建築家の安藤忠雄さんが、「この国のこれからを支えていく子どもたちに、豊かな感性を育んでほしい。手軽で瞬時に情報を入手できるインターネットとは違い、読書は心の栄養になる。」という思いを込めてつくった場。プロジェクトの発案から、市民や民間企業の支援を募るところまで、陣頭指揮をとって実現させたという。

大阪市のプロポーザルで提案が採択され、幅さんは全体のクリエイティブディレクションを担った。書籍を分類して配架するに留まらず、どう見せるのか、どう伝えるのか、どう手に取ってもらうのかといったところまで視野に入れ、いわばコンテンツ全体のデザインを行なったのだ。

注力したひとつは、「安藤さんのメッセージを読み解くこと」(幅さん)だった。同氏が長年にわたって抱いてきた思いを、同氏が設計した建築物も含め、活かしきることを念頭に置いた。3フロアにわたる施設内は、壁面いっぱいに木の棚割りがなされている。随所に座って本を読める大階段や、押し入れを彷彿とさせる階段裏のスペース、高い円筒形の吹き抜けの空間など、大人でも気持ちがワクワクする設えが施されている。

「子どもたちのまっさらな心に語りかけるものが詰まった愉快な本棚」と...

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