IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

           

広告少年

「歌」と「絵」の引力

松田翔太、吉兼啓介

これまで、ちょっとひねくれたCMや余白のある表現が好き、と話してきた「広告少年」の2人。でも改めて振り返ってみると、商品名を連呼する歌モノCMや1枚絵の強さが際立つCMにもお気に入りはたくさんある。今回は少し趣向を変えて、シンプルな広告の魅力を探ります。

頭から離れない、あの「歌モノ」CM

吉兼:一番初めに翔太さんと話した時、湖池屋の「ポリンキー」のCMっていいよねって話しましたよね。「ポリンキー」のガチャガチャ(カプセルトイ)を見つけて翔太さんに写真を送ったの覚えてます?(笑)。

松田:覚えてるよ(笑)。

吉兼:シークレットもあるらしい、とか話したくらい、僕らが幼い頃に見ていたそのCMが記憶に残っていて。

松田:あれほど頭の中に音楽が残っているCMはないかもしれない。あと「ドンタコス」も。「ポリンキー」の歌は、「三角形のヒミツはね……」って言っておきながら「教えてあげないよ、ジャン」で終わるじゃない。教えてくれないから、印象に残ったんじゃないかな?

吉兼:「ポリンキー♪ポリンキー♪」って今でも歌えますもんね。ヒミツを教えてくれないからこそ、印象に残っているんですよね。きっと。

松田:その最後の部分に、デザイナーの気配を感じるよね。子どもからすると、どちらも100円ぐらいの高めのお菓子ではあったけど、このCMを見たらもう買わざるを得ないというか。

吉兼:(笑)。しかも「ポリンキー」も「ドンタコス」も、CMでは味が想像つかないじゃないですか。未知のお菓子みたいな。「ドンタコス」はメキシカンですもんね。

松田:「ドンタコス」のCMは、まずあのステップがいいでしょ。そして後ろの人(「二人のドンタコス」篇に登場)がちょっとダンスが下手でしょ(笑)。

吉兼:踊らされている感じ(笑)。ここまでの2つはどちらも佐藤雅彦さんによるものですね。NECの「バザールでござーる」のCM(1991年に最初の「寄り道はいけないでござーる」篇が公開)も有名ですね。

松田:「バザールでござーる」は、子どもからしたらアニメそのものだったもんね。「ポリンキー」もそうだけど、15秒で1話分が見られたみたいな。

吉兼:ああ、1話見れてラッキー!みたいな。

松田:あと「ドンタコス」や「ポリンキー」は、前提としてお菓子のネーミングのセンスがあるよね。「ドンタコスったらドンタコス」って、“たら”だけでつないでいるのもすごい。“ドンタコスといえば、ドンタコス”ってことなのか?

吉兼:“ドンタコスがいい、ドンタコスがいい”っていうことだと思います。たぶんスーパーとかで子どもがお母さんに言うんじゃないかな?「ドンタコスったらドンタコス」って。

松田:あぁ、何がなんでもドンタコスということを。“何がなんでも”と言わなくても伝わるわけだからすごいよね。あと湖池屋「スコーン」のCM(「社交ダンス」篇、1988年公開)とか。「カリッとサクッとおいしいスコーン」っていうのも言いやすいし、もう頭から離れないもんね。でもちょっと大人な感じがしなかった?

吉兼:たしかに、大人っぽい雰囲気を感じましたね。大人な味なのかな?とかも。

松田:だよね。あとどんどん挙げていっちゃうと、「むじんくん」(アコム)のCM(「むじんくん 限定モデル+ゲーム」篇、1996年公開)は宇宙人が「持ち合わせないよ」「じゃ、地球よってく?」って言う、タメ口感がすごく新鮮で。気軽な感じがカッコよかったですね。

吉兼:「ラララむじんくん♪」って歌も大好きで、小学校の学級新聞を「むじんくん」っていうタイトルでつくってました(笑)。

松田:あと僕は「ほねっこ」(マルカン)の「ゴン太のおきらくな1日。」(1993年公開)も好きでした。学校に遅刻した時にテレビをつけてゴン太を見て、すごい羨ましかったもん。犬いいなぁ、猫もいいなぁ、動物っていいなぁ、みたいな(笑)。

吉兼:でも当時って、きっと公開前に好感度調査などをしていないと思うので、流行るかどうかは実験だったんですよね。それが奇跡的にうまくできている。にしても、CMソングを歌えるのって、時代を共有している感じがして嬉しいですよね。

湖池屋/ポリンキー「ポリンキーの秘密」篇(1990年公開)。

湖池屋/ドンタコス「ストリート・オブ・ドンタコス」篇(1994年公開)。

ポイントは「気持ちいい」?

松田:あと最近のもので考えてみると、KINCHOの「タンスにゴンゴン(クローゼット用)」の双子が歌っているCMが好きでした。これは自分が子どもだったら、たぶんハマっているだろうと。後ろのおじさんの叫び声とか、センスがいいんですよね。聞いていて気持ちがいいなと思った。

吉兼:それかも!“気持ちいい”ということがキーワードで。だから記憶に残るんじゃないですか?

松田:気持ちいいのか。合間におじさんが叫ぶ「ワー!」っていうのは何だろう?

吉兼:不協和音のような要素を一瞬入れたほうが、気持ち良さが際立つんですかね。

松田:でもきっと、その叫び声ありきのCMなんだと思います。歌声だと優しすぎるというか、子どもらし過ぎるところがあるのかも。それから、たまに家でつい歌っちゃうのがマウスコンピューターのCM。

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

広告少年 の記事一覧

「歌」と「絵」の引力(この記事です)
広告少年、気鋭の監督に聞く
「演者」と「企画者」、かく語りき
CMと映画の両方から「わからなさ」を考えてみよう。
ブレーンTopへ戻る