気になるあのCMの演出やキャスティングについて、ディレクターにインタビュー。今月取り上げるのは、「こだわり酒場のレモンサワー」のCMだ。

黒田さんが描いた絵コンテ。
演出の仕事は舞台を用意するだけだった
「♪チャーチャチャララチャー チャチャーチャーチャーン」と鼻歌で自身のヒット曲『夢芝居』を口ずさみながらレモンサワーをつくる梅沢富美男さん。グラスに氷を入れ、レモンサワーの素、ソーダを注ぎ、マドラーで1回ステアしゴクリ。そして、「サントリー」の一言で締めくくられる。
「中尾孝年さんから企画書が届いたときに、あのCMのオマージュではと思い、話を伺いました。するとやはり、サミーデイヴィスJrの『サントリーホワイト』のCM(1973年)のオマージュであると。そこで、ホワイトのCMを最大限にリスペクトしつつ、その“こだわり酒場のレモンサワー版”をつくろうと決めました」と黒田秀樹監督。
当時のCMにならい、ワンカットで撮影し、美術も必要最小限。当初の企画と変更する形で衣装は割烹着からスーツに、背景は黄色から白ホリに。スーツの光沢感やシンプルな背景が、自らつくるレモンサワーならではの、改まった至福の時間を演出する。30秒ピッタリで演技をしてもらうために、大きなデジタルタイマーをレンズの横に...