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「要請」の多い時代に広告のつくり手が考えるべきこと

橋田和明、渡辺潤平

世の中の時流をとらえ、企業の想いや勢いを後押しするようなさまざまな広告を手がけてきた、コピーライター 渡辺潤平さんとクリエイティブディレクター 橋田和明さん。元々同じ会社の先輩・後輩関係でもあるお二人に、社会文脈と企業の意志をマッチさせた広告のつくり方について聞きます。

チャーミングに「要請」した山田水産の新聞広告

──そもそもお二人は、普段世の中の動きを何から読み取っていますか。

渡辺:僕は新聞が自分の基準になっていて、日本経済新聞と朝日新聞と日刊スポーツと日経MJを購読して日常的に読み比べています。今世の中で何が起きているかというのを十分に取り込んでおかないと、やっぱり言葉は書けないと思うので、なるべく記事はたくさん読むようにしていて。でも社会文脈をとらえるという意識よりは、自分がどう思ったか、を大事にしています。

橋田:そんなに読んでいたんですね!日刊スポーツが入っているのが、潤平さんらしいです(笑)。でもやっぱり新聞は、社会の論調をとらえる勉強になりますよね。

渡辺:そうですね。ひとつの物事でも語り方が全然違うので、こういう物の見方もあるのか、と学べる点が面白いですね。

橋田:僕はYahoo!ニュースが多いですね。気になったものについては、Twitterなどでも反応を調べます。ネガなの?ポジなの?どんな意見があるの?と。あと気を付けなければいけないこと、論点はどこかというのを見ています。

渡辺:つい見ちゃうよね。いろんな視座があるんだっていうことがよくわかるし。

橋田:そうですね。「ほとんどの人が同じ感想を持つ」という状態はありえない時代なんだなと思いますね。価値観が人によってそれぞれ異なるし、それが発信できる時代だというのを実感します。

渡辺:だからこそ、自分が何を信じるか、というのも大切だなと思います。

橋田:現在は、SDGsやサステナビリティ、最近で言えばコロナにおける自粛など、「社会的要請」が非常に大きい時代だと感じています。要請されることって、抑圧感を感じますよね。でもそれを「享受」した方が面白いと思うんです。「享受」って、自分のメリットになることを進んで受け取り、自分の楽しみや利益にする、という意味なんですけど。「こうしなければいけない」というメッセージを「こうした方がよりよい未来が待っているよ」と受け取ることもできるというか。

僕はよくエコバッグを使うんですけど、それはポリ袋が有料化されたからというよりは、エコバッグを持っているほうが気持ちいいなと思うからなんです。要請される時代だからこそ、その力を利用して、みんなで一歩いいところに持っていける時代でもあるのかなと思っていて。

渡辺:たしかに。広告をつくる立場としては「見る人にとってはどうか」というところまで責任を持たないといけないと思いますね。「要請」をそのまま伝えようとしがちな広告やコミュニケーションもよく見ます。

大分県に本社を置く水産加工食品メーカーの山田水産が、7月26日に日本経済新聞に出稿した新聞広告。橋田和明さんがクリエイティブディレクション、渡辺潤平さんがコピーを担当している。

──最近お2人は7月26日に出稿された山田水産の新聞広告を手がけられていましたね。

橋田:そうですね。山田水産の「日本経済よ、魚を食べろ。」という潤平さんが書いたコピーも、要請しているけど要請の仕方のチャーミングさがポイントです。魚を食べただけで日本経済が元気になるはずがないと、みんな思うはず。けれど、言い切ったキャッチと隙を感じさせるボディの関係性が、楽観的な希望を感じさせるために大切なんだろうなと。

渡辺:「もっと魚を食べてほしい」というだけだと、それは水産会社の広告だからそう言いたいに決まっているよね……というところをどう捻るか。そこから生まれた発見ではあったんですけどね。

橋田:そもそも、この広告は山田水産から企業ムービーをつくってほしいと言われたところから始まっているんです。いろいろとヒアリングすると、凄い技術と情熱を持っていて。みんなの胃袋から元気にして、ひいては日本経済を元気にしたいという熱い思いをお持ちだったので、まず意思表明として新聞広告のほうが良いのではないかと提案しました。そのタイミングで潤平さんに声をかけたんですよね。

渡辺:そうでしたね。この頃、報道ではオリンピックの開催の是非をめぐる議論が白熱していて、中止となった場合の経済損失などが話題になっていました。経済に置き換えてみると、いろいろなことが可視化されるのが面白くて。じゃあ魚を食べる、食べない、という視点を経済に置き換えたらどうなるかなと思ったんです。そこで国内の1人あたりの魚の消費量の数字と、GDPなどの経済規模のチャートと見比べてみたら、図らずも一致していたので、これは面白いなと。そこから生まれたコピーです。

橋田:このアイデアに決まってから、アートディレクターの小栗卓巳くんも含めて一番議論したのは...

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