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好調企業・ブランドの勢いを加速させるクリエイティブ

切実な本音に反響 「#若者に売れたい」キンカンの挑戦

金冠堂/キンカン

金冠堂が展開する「キンカン」は2018年から若者をターゲットにした企画を実施している。毎年夏前に話題になるコミュニケーションはどのように生まれてきたのか。これまでの軌跡を辿る。

6月21日から7月4日にかけて掲出した交通広告では、「#若者に売れたい」と謙虚でまっすぐなメッセージが話題に。「キンカンの実直なキャラクター設定は、(金冠堂の)横尾賢則さんご自身からもインスピレーションを得ているのかもしれない」と興津隼人さん。

攻めの提案から始まった5年間の企画

1926年に誕生した金冠堂の主力製品「キンカン」【第2類医薬品】。95年以上の長きにわたって愛されてきたものの、ブランドも年を重ね、若者の認知や新規ファンの獲得において課題を抱えていた。そこで2018年から、若年層に特化したプロモーションの展開を開始。伝統を逆手にとったコミュニケーションが話題を集めている。

金冠堂がコンペを実施したのは2017年。当初のお題は「若年層向けに企画した新商品のプロモーション」だった。

当時から企画に携わる東急エージェンシーのコミュニケーションディレクター/統合プランナー 月足勇人さんは「実はその際、その商品では長期的に若者に支持されていくブランドにはなれません、という提案をさせていただきました。親世代が『キンカン』を常備薬として家に置いていたように、虫さされ薬はひとつのマイブランドを継続して買い続ける傾向が強いカテゴリです。であれば、まずは世代的に『キンカン』がマイブランドになりきれていない若年層のエンゲージメントを中長期的に高めて支持してもらうことが大切だと考えました。とはいえ、そんな企画自体を否定するような提案をしたら怒られるのではないかと、上司に何度も確認したのを覚えています(笑)」と話す。

それを受けた金冠堂の広告宣伝課 横尾賢則さんは「挑戦的な提案ではありましたが、キンカンというブランドをよく理解してくれているなと説得力がありました。さらに5年先を見据えた、中長期的な計画だったのが決め手でしたね」と、振り返る。

それまでのイメージの真逆をいく試み

それから毎年夏の商戦期に合わせて、若年層向けの企画を実施している。2018年にはWeb動画「男の知らないSNS女子の生態」篇で、究極の“インスタ映え”を求める女子たちの意外な素顔を描いた。

翌19年からは、本格的にプロモーションを展開。「キンカンがあれば蚊にさされてもスタイリッシュに、ありのままの自分らしい装いに。」をテーマに、「KINKAN SUMMER COLLECTION 2019」を公開した。涼し気にポーズをとるモデルが映る交通広告やファッションショーの様子を映したPR映像は、さながらハイエンドのファッションブランドのよう。しかしよく見ると、モデルの手元にはキンカンが握られている。

「伝統を大切にしながらも、キンカンの“古臭い”“年配向き”といった見え方を“今っぽい”“若者向き”に変えるために、現状と正反対のことをしようと考えました。そこで出たのが、キンカンをハイエンドなファッションブランド化する、というアイデア。説得力を持たせるために、セリフ体を用いたローマ字のロゴや蚊のモチーフなど、細部までとことんこだわって世界観をつくりました」と、東急エージェンシーのクリエイティブディレクター 興津隼人さん。それまでのキンカンのイメージを華麗に裏切った企画は、さまざまなメディアで取り上げられた。

続く2020年...

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