IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

広告少年

広告少年、気鋭の監督に聞く

浜崎慎治、佐藤渉、松田翔太、吉兼啓介

少年のように広告を愛してやまない2人が広告について探求する連載「広告少年」。第4回の今回は、ゲストとして映像制作の第一線で活躍する監督、浜崎慎治さん、佐藤渉さんが登場。お2人の経歴やモットーを掘り下げながら、これまでの回で挙がった疑問をぶつけてみます。

なぜ、監督に?

吉兼:これまで3回にわたって、僕と翔太さんで話してきましたが、今回は僕らが実際に仕事でご一緒してきた監督をお招きして勉強させていただこう、という回です。そもそもなんですけど、お2人はなぜCM監督になられたんですか?

浜崎:僕は大学で建築を勉強していたんですが、卒業する1999年がちょうど就職氷河期だったんです。4年生の秋頃まで、就職浪人するしかないかも、くらいに思ってて。そんな時、スチールカメラマンをやってた兄貴の家に行ったら『コマーシャル・フォト』が置いてあったんですよ。その裏表紙に制作会社の募集が載っていて、CMとか映画が好きだったので勢いで応募しました。運よくそこに就職できて、そこから2年間はプロダクションマネージャーとして働きました。

吉兼:面白いきっかけですね。

浜崎:働いてみると、この業界が楽しくなってきて。現場とかで見ていると、どうやらCM監督というのが面白そうだぞ、と興味を持ちました。でもその会社にいてもすぐにはなれないようだったので、1回退職。当時はソニーのビデオカメラの「VX1000」とかが出始めた頃で、そこから約2年間は自主制作をする日々でした。そこでできた映像をCM監督の竹内スグルさんたちが審査員をやっていたインディーズの映像のアワードに出したら、賞を獲ったんです。「テアトル新宿」で深夜にそういう作品を集めて上映する会があったりして。

松田:良い時代だなあ。単館映画とかが流行ってた時期ですね。MTVとかも。

浜崎:そうそう、映像の力がすごいアツかった時代で。それから少ししてお金もなくなってきて、やっぱりCM監督がやりたいなと。

佐藤:なんでCMだったんですか?

浜崎:短くて記憶に残るのがすごい好きで。テレビでいきなり出くわして、人の脳裏に焼き付ける感じが好きなんです。

松田:ああ、わかります。

吉兼:全く同じことを以前翔太さんとも話しましたね。

浜崎:それでその後、TYOに作品を送ったら入れてもらえたんですよ。でもそこからもまた厳しかった。大きな会社なので、社内でなかなか仕事も回ってこなかったんです。だから自分でアピールしなきゃと思って、実家の醤油屋のCMをつくりました。そしたらそれでACC賞のテレビ部門でブロンズを獲ってしまって(笑)。

松田:へえ~~。

浜崎:そうすると社内で少し目立ってくるじゃないですか。それで少しずつ仕事を振ってもらえるようになって。

松田:じゃあもう、浜崎さんの実力で。実家がクライアントのCMで入賞っていうのは結構レアなものですか?

吉兼:いやもうレア中のレアです。業界ではこの話は逸話になっています(笑)。渉さんはどういう流れで広告制作の世界に入ったんですか?

佐藤:僕は就職先も決まっていた大学4年生の冬、たまたま友だちに「世界のCMフェスティバル」っていうイベントに誘われたのがきっかけ。オールナイトで、みんなでビールとかを飲みながら海外のCMを見続けるイベントで。

浜崎:あったね!新宿の映画館でやってるイベント。

佐藤:そう。それを見たら、CMの概念が良い意味で崩れてしまって。こういう表現を日本でもやれるのかな、職としてできるなら面白いな、って。それで広告会社とかを調べ始めたんだけど、もちろんどこも採用は終わっていたんですよね。とりあえず内定を辞退して、東北新社がやってる「映像テクノアカデミア」のCMプランナー科(現在はクラス休止)に入学しました。

浜崎:そうだったんだ。

佐藤:で、その頃に毎月読んでいたのが、『広告批評』。TUGBOATがかっこよくて、CMプランナーという仕事がすごく魅力的に見えていましたね。

松田:そこも一緒ですね(笑)。

佐藤:でも卒業後に就職できるところなんてないので、アルバイトしつつ「宣伝会議賞」に応募して、初代のCM部門賞(2003年)をもらったりして……。で、2006年、25歳くらいの時、『広告批評』に求人が載っていたTYO MONSTER(当時はMONSTER FILMS)に面接に行ったら、面白いねと気に入ってもらえて。

浜崎:え~意外な経歴。

佐藤:そう。だからとにかく企画だけをやりたかったんだけど、当初「企画演出部」に配属されたので、演出もやらされてたんです(笑)。

吉兼:やらされて(笑)。

佐藤:最初は広告会社に出向していたんですが、1年後に戻ってきたその日に「3日後に撮影があるから企画演出やって」と言われて。いざ現場に行ってみたら、全く演出なんてできないし、なにが面白いかわかんないって思ってました。

一同:(笑)。

佐藤:そんな中で転機になったのが、「SUNSHINE SAKAE」のCM。自分が納得する企画を立てて、演出までできたのが大きかったです。

吉兼:カンヌライオンズに入賞した作品ですね(フィルム部門ショートリスト、2005年)。

松田:お2人の話を聞いてると、最初は自分で企画も演出もなんでもやります、っていう感じなんですね。

浜崎:最初から若手に面白い仕事が来ることはないので、全部自分でやるしかないところもありますよね。

佐藤:うん。でも今はその面白みも感じていて。企画だけ立てて誰かに渡すんじゃなくて、全部自分でやり切るのもいいな、と。

浜崎:でも経験を積むにつれ、自分だけで企画から演出まで完結させる必要もなくなってくる。吉兼くんのような広告会社のCMプランナーと仕事ができるようになるし、「餅は餅屋」という風になっていくというか。

松田:なるほど。面白いですね。

浜崎慎治さんが制作した楠城屋商店のCM「活け造り」篇。楠城屋商店は浜崎さんの実家で、このCMで2005年のACC賞テレビ部門でブロンズを獲得。「予算もなかったので、当時所属していたTYOがよく頼んでいたお寿司屋さんで撮影させていただきました(笑)」(浜崎さん)。

佐藤渉さんが企画・演出ともに主導した「SUNSHINE SAKAE」のCM、「やさしい父」篇(左)と「タクシー」篇。Cannes Lions 2012のフィルム部門のショートリストに選出された。佐藤さん曰く、「演出が楽しいと思えるきっかけになった仕事」。

影響を受けたCMは?

吉兼:では続いて、お2人が影響を受けたCMを聞きたいんですが。

佐藤:僕はね、「ファンタ」。

一同:ああ~~。

佐藤:その中でも...

あと61%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

広告少年 の記事一覧

広告少年、気鋭の監督に聞く(この記事です)
「演者」と「企画者」、かく語りき
CMと映画の両方から「わからなさ」を考えてみよう。

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
ブレーンTopへ戻る