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デザインプロジェクトの現在

場の記憶に介在するサインの話

柿木原政広、木住野彰悟

木住野彰悟さんから『寸法 展示後の記録』と題した冊子が届いた──サインにまつわる展覧会の記録だ。一方、「角川武蔵野ミュージアム」のサインを手がけた柿木原政広さんの仕事も気になっていた。今回はサインデザインにまつわるお2人の話をまとめた。

柿木原政広さんがロゴやサインシステムを手がけた、「ところざわサクラタウン」の中にある「角川武蔵野ミュージアム」。中には映像を用いた「動くサイン」も。

情報の伝え方で場の空気が変わるもの

「角川武蔵野ミュージアム」は、2万枚に及ぶ石板でできた31もの面を持つ建物の外観が、圧倒的な存在感を示している。中に入るとユニークなコンテンツがぎっしり──「本棚劇場」は松岡正剛氏の監修による約3万冊の本が並んでいるし、「荒俣ワンダー秘宝館」には貴重なコレクションが惜しみなく披露されている。そして案内役となるサインもさりげないながら独自性を放っていた。

印象に残ったのは、ピクトグラムが動くサインだ。入り口付近には、インフォメーションの場所と役割をピクトグラムで表示したものがある。トイレは人型マークの足が微かに動き出し、歩き出す姿が方向を示している──動きがあるので目を引くし、それぞれに少しのユーモアがあって愛着がわく。「動くサインという存在自体も、実験的なことに挑戦していくこの場のありようにつながると解釈しました」(柿木原さん)。フロア案内図についても、アニメのコマ割りをモチーフにし、KADOKAWAという企業とのつながりを視野に入れたという。

柿木原さんは、サインを手がけるにあたり、建築が備えている多面性に加え、小説と連動した映画の制作、ライトノベルというジャンルの確立など、KADOKAWAが切り拓いてきたメディアのありようを踏まえ、「多面性」と「多様性」というコンセプトを立てたという。

そもそもサインは、場の意味を知らしめ、人の行動を促すものであり、情報を伝える大事な役割を担っている。「サインは情報の伝え方で場の空気を変えるものであり、理論と感覚の双方が不可欠。だからこそコンセプトワークが大事」と柿木原さん。「多面性」と「多様性」という考えを土台にしたサインが周囲と一体化し、全体の求心力を強めている気がした。

施設におけるデザインは、グラフィック、サイン、インテリア、建築など、実に多岐にわたっている。それだけに...

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