デザイナーの活動領域は無限だ。アディダス、ナイキなどのアートディレクターを経て、現在は東京大学生産技術研究所に所属する山崎みどりさんがデザインと周辺領域の融合について解説する。
職人の暗黙知からイノベーションを生む
行き詰まったときに、好きになれなかった昔の上司になったつもりになって、あの人だったらどうするんだろう、と想像してみることがあります。なれるわけはないのですが、自分とは全く違うその人の言葉や行動を近くで見ていた経験が、解決策をくれることがあります。
400年以上続く伝統技術である金平糖製造を行う、緒方製菓(大阪・八尾市)の代表取締役 緒方勝さんの葛藤はデザイナーのそれと似ていました。緒方さんは金平糖製造に関する全てを1人で統括し、金平糖づくりに集中するためブランドを持たず卸専門で行っています。
緒方製菓の朝は7時30分から始まります。冬の寒い日、室内は40度。いるだけで汗がどっと出てきて、夏はどのくらい暑いのだろうと想像しました。緒方さんはそんな環境で30年以上金平糖づくりを続けており、業績はほぼ右肩上がりで技術の高さをうかがわせます。ただ、今でも職人として自分の技術に伸びしろがあると考えていて、跡取り問題やスタッフのマネジメントと、自分の技術を磨くバランスが課題だそうです。
そんな伝統技術の職人の緒方さんと、東京大学生産技術研究所 小倉研究室・新野研究室・構造計画研究所(KKE)、そしてDLX Design Labの分野横断的なコラボレーションは、新たな価値の創造に繋がる発見をもたらしました。このプロジェクトはKKEの...