クリエイティブリレーは商品やサービスの新しい表現を、複数のクリエイターとリレー形式で開発していく連載企画。今回は、VAIOの新製品「VAIO®Z」をテーマにしたムービーを3本制作。ここでは、そのクリエイティブを紹介します。
VAIO
ソニーからPC事業を継承し、2014年7月1日に設立。長野県安曇野市に本社および製造拠点を置き、PCおよび関連製品・サービスの企画・開発・製造・販売・サポートを一貫して行う。
VAIOは2021年2月、2015年以来となる「VAIO®Z」の新製品を発表した。新たな顧客層への出会いと同社のブランドミッション「挑戦に火をともそう」を体現する映像を制作するべく、3組のクリエイターたちが参加した。
世界初(※1)立体成型フルカーボンボディ 軽量×スピード、堅牢性、スタミナを実現
今回の映像制作にあたり、クリエイターに期待した表現の方向性は「ブレイクスルー」「グローバル」「ウイット」。いずれも新たな顧客層との出会いを目指し制作された。参加したのは、AOI Pro.、LOBO、xpdの3社。それぞれ3本の映像には「VAIO Z」のスピード、堅牢性、スタミナといった製品特長も盛り込まれている。
軽量モバイルPCで唯一(※2)の高速プロセッサーを搭載したスピード、天面・裏面の2面において最高127センチメートルの高さからの落下衝撃から本体を守る堅牢ボディを実現したこと、そしてVAIO史上最長となる連続最大34時間駆動(※3)のバッテリーといった特長をそれぞれ表現している点にも注目したい。
完成した映像はSpotifyの動画広告として展開しているほか、7月からはタクシー内広告も放映する。TSUTAYAが運営するコワーキングスペースでも、実機展示とともに動画を紹介する予定だ。
若者の葛藤と挑戦に寄り添うブランドに AOI Pro.
「挑戦って」篇(60秒)
NA:挑戦って なんだろう
挑戦って かっこ悪い
挑戦って 疲れる
挑戦って 孤独だ
もう無理かもしれないって思うけど
けど
踏み出そう
まだなにも始まってない
挑戦って 夢中になることだ
挑戦って あきらめないことだ
想像を止めないことだ
挑戦を続けよう
ドキドキすることを
ワクワクすることを
進み続けよう
それがたとえ小さな一歩でも
S:挑戦って VAIO
「思い通りにならない」3人の若者たち
主人公は新たな仕事やプロジェクトに挑戦する、3人の若者たち。営業先に出向き、頭を下げなければいけない。取引先に懸命にプレゼンをしても聞いてもらえない。黙々とプログラミングに取り組むが、突破口が見つからない……若者の日々の挑戦は、うまくいかないことばかりだ。それでも「踏み出そう」「挑戦を続けよう」と自らを奮い立たせる。その傍らには、いつも「VAIO Z」がある──。
この映像を手がけたのは、AOI Pro.の吉池巨成さん。起点となったのは、VAIOのブランドステートメント「挑戦に火をともそう」だ。「オリエン資料にあった“我々は、挑戦をし続けなければならない。”というVAIOブランドのあり方を示した一文が印象的でした。社会経験の少ない若者にとって、大抵の挑戦は思い通りにならない。そんな日々の葛藤をリアルに描きました」。
最も印象的であるのが、路上で人にぶつかりVAIOを地面に落としてしまうシーン。これはVAIO Zの堅牢性を示すとともに、観る者が思わず映像の世界に引き込まれる効果をもたらしている。タクシー内広告としての活用も想定し、音声がなくてもインパクトが与えられるという点も考慮した。
「“挑戦”という一本の軸を定めて、性能が伝わるよう意識しました。朝から晩まで仕事に集中するシーンのタイムラプス映像ではバッテリーの持ちのよさを、顔認証でログインしてソースコードを一気に打ち込んでいくシーンではすぐに起動できるスピード感を表現できたと思います」。
60秒の映像を締めくくる「進み続けよう/それがたとえ小さな一歩でも」というフレーズは当初予定していなかった。「編集段階で、VAIOがブランドの信条として掲げていた“たとえ小さな一歩でも、昨日より良い明日を目指す人。”というフレーズが目に留まって。よりブランドの想いが伝わるのではと思い、急きょ加えました」。
吉池さんにとっても今回の映像制作は“挑戦”だった。「VAIO Zは若者たちの挑戦を手助けしてくれる存在ではありますが、最後に挑むのは自分自身。そういうメッセージを感じてもらいたいです」。
- 企画+C+演出/吉池巨成
- Pr/三須大輔
- PM/吉川杏平
- 撮影/大河原真生
- 照明/梶真樹人
- 編集/高橋峻平(オフライン)、白垣絵夢(オンライン)
- カラリスト/西田賢幸
- 音楽/丸橋光太郎
- MIX+SE/鈴木泰憲
- ST/長井佑介
- HM/SHIHO
- NA/飯田佑太
- 出演/近藤勇磨、兎丸愛美、佐々木怜
人間の物哀しさ、滑稽さと性能を重ねる LOBO
「Not with VAIO Z 待たない」篇(15秒)(ほか、「Not with VAIO Z 壊れにくい」篇、「Not with VAIO Z スタミナが切れない」篇、「Not with VAIO Z 重くない」篇)
♪~
S:STILL WAITING.
NOT WITH VAIO Z
VAIO Zだと待たない
ロゴ
冷え切った男女の関係から逆説的に表現
花束を抱える男性と、笑顔で風船を持つ女性。カップルと思しき2人は誰かの到着を待ちわびている。ぼんやりと立ち尽くしたまま時間の経過とともに2人の表情がなくなり、すっかり日が暮れてしまう。やがて画面一杯に広がる「STILL WAITING.」の文字。そして「VAIO Zだと待たない」というメッセージで締めくくられる。
この15秒の動画は、LOBOが制作した全4篇のうちの1篇「Not with VAIO Z 待たない」篇。残り3篇もこの男女が主人公だ。全篇を通じて、2人の関係が冷え切って肉体的にも精神的にも追い詰められていく様子が読み取れる。同時に、VAIO Zの機能性である「並外れたスピード」「落としても壊れにくい」「充電の持ちがいい」「軽い」といった製品特長を逆説的に伝えている。たとえば「壊れにくい」篇では、「高さ127センチから落下する衝撃から本体を守る堅牢ボディ」というVAIO Zの強みを写真立てが落下するシーンから感じさせる。
LOBOの三上マテオ俊さんは「映画のワンシーンのような映像で、人生で誰もが経験したことのある微細な感情とVAIO Zの製品特長を重ねて表現しました」と説明する。たとえば「スタミナが切れない」篇では肉体的な疲れだけでなく、冷え切った2人の関係に精神的に疲弊している様子を描いている。「2人は実際の夫婦で、Instagramで見つけました。投稿を見て、間の抜けた瞬間とか隙のある表情を自然に出しているところがいい意味で広告っぽくなくて魅力的だったんです」(三上さん)。
映像自体もどこか引っかかりがあり、見ている人の想像が膨らむような内容に仕上げた。LOBO 奥村昂子さんも「ちょっと違和感があり、もう一度見返したくなる。そういう表現によってブランドの奥深さやこだわりを感じていただけたら」と話す。
「昼夜の変化や小道具などから、人間の物哀しさや滑稽さを表現できたと思います。一見するとわかりにくいかもしれませんが、イマジネーションを掻き立てられるような映像で、VAIO の機能性とともにチャレンジングな姿勢を大事にするブランドの個性を伝えられたら嬉しいです」(三上さん)。
- Pr+演出/三上マテオ俊、奥村昂子
- 撮影/山田貞子
- 編集/前原菜々子
- プロダクションアシスタント/Miquel Soler Leida、高畷久美子、渡邊友菜
- HM/横山友香
- ドライバー/楠三由樹
- 出演/長南吏砂、大城規彦、ベル(犬)
3つの特長を“からくり装置”で表現 xpd
「可能性のその先へ VAIO Z」篇(30秒)
♪~
S:START
最軽量モデル約958g
バッテリー最大駆動時間(動画連続再生)
約18時間
ラフに使える堅牢ボディ
NA:軽く、長く、強く
NA+S:可能性のその先へ VAIO Z
遊び心を追求した緩急のある展開
3本目は、黒い背景に浮かび上がるオリジナルのからくり装置が駆動し、「VAIO Z」の3つの特長を凝縮して伝える動画だ。
ボールに押されて一気にドミノが倒れ、指差し棒でVAIO Zのキーボードをタッチ。すると植物が芽吹くタイムラプス動画が再生される。やがてVAIO Zの本体はエレベーターのように上昇し、かごに入った3つのりんごとすれ違う。昇り切ると、色とりどりの4種類の水が容器に滴り落ちる。そして水の重みで紐が引っ張られ、カップから飛び出す無数のビー玉。そのままVAIO Zの本体が滑り台を一気に降下していく──この間、わずか30秒。「軽く、長く、強く/可能性のその先へVAIO Z」というナレーションで締めくくられる。
演出を手がけたのはxpd 寳榮夕貴さん。日頃はコメディ調の映像制作が多く、今回のようなクールな映像演出は初の挑戦だった。「装置の動きに集中できるよう、緩急をつけています。装置の全体像をあえて見せずに変化を追いかける人の目線に沿ったカットで構成しました。仮に無音で再生しても、引き込まれる映像に仕上げています。大変だったのは美術スタッフの皆さん。3日で全アイテムを揃えてテストし、撮影は1日で終えることができました」。
最も悩んだのは、からくり装置の仕掛けとVAIO Zの特長をどう結びつけるか。エレベーターのようにVAIO Zの本体が上がっていくシーンで重量1キロを切った「軽さ」を、容器に水が滴る様子で「スタミナ」を、終盤にVAIO Zが滑り落ちる仕掛けで「堅牢性」を伝えている。キーボードを打つ指差し棒の角度を何度も試したり、容器に水が流れる量の調節に苦労したり、VAIO Zの本体が斜面をコースアウトしないようにケアしたりと、調整に時間をかけた。
制作チームは20代~30代前半の若手で構成され、まさにVAIOブランドの価値と出会ってもらいたいターゲットそのもの。「職業柄もあり、私も含めVAIOを使ったことがなかったメンバーがほとんど。でも実際に手にしてみるとスリムで格好いいし、スペックも充実している。この価値を伝えようと、メンバーと何度も議論したからこそ完成した映像です」(寳榮さん)。
- 演出+企画/寳榮夕貴
- Pr/星伸之
- PM+NA/青山勝哉
- PM/坂元里江
- 撮影/米澤佳州子
- 照明/藤江立
- 美術/湯本愉美
- 編集/玉木洲太
- MIX/渡辺貴代司