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感じるブックジャケット(AD)

紙を生み出すエネルギーを「年輪」で見える化したブックジャケット

木村浩康「紙の年輪」

電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーではさまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛け合わせることで、触って感じる新しいブックジャケットを提案していく。

紙を生み出すエネルギーを見える化

品質とコストバランスの良さで、幅広い用途に使われる印刷用紙「テイクGA-FS」。ともすれば無難な選択肢になりがちな存在でもある。あらためて紙の価値と向き合う中で「紙選びの新しい基準があってもいいのでは」という考えから、紙を生み出すエネルギーを“見える化”したブックジャケットを手がけたのはフロウプラトウ アートディレクター/UIデザイナー 木村浩康さんだ。

「紙の年輪」というタイトルを冠したこのデザイン、国内の紙・パルプ産業の「CO2排出量」「エネルギー使用量」(※)をパラメーターとし、ビジュアルプログラミングで年輪を表現した。

「年輪部分はデボス加工しました。現在公開されている2009年から始まる連続したデータを使用し、外側に向かって最新の10年分のデータを重ねて表現しています」(木村さん)。

年輪の太さはエネルギー使用量を、年輪部分の折り返しの数はCO2排出量を、円の歪みは年数の経過を表している。あらゆる業界でサステナビリティが注目される中、紙・パルプ産業ではエネルギーやCO2を少しずつ削減してきたことがわかる。年輪の部分に透明箔やニスを用いた加工も検討したが、あえてシンプルにデボスのみとした。

日頃テクノロジードリブンな仕事に取り組む木村さんにとって、「アナログかつオーソドックスな紙の価値をいかに表現するか」を考える機会そのものが新鮮だったという。なおかつ、コンピュータの手癖や“機械っぽさ”が出すぎない表現を模索した。「紙を生み出すエネルギーをデータビジュアライズすることで、テクスチャや色味、価格といった視点だけではない、新たな紙の選び方が生まれるのではという提案が狙いです。製造工程にも目を向け、エネルギーに配慮しつつ紙を選ぶ。そんな考え方が定着する日も近いかもしれません」。

ビジュアルプログラミング:塚本裕文(フロウプラトウ)
※出典/経団連低炭素社会実行計画 2020年度フォローアップ結果

ライゾマティクス_マルティプレックスポスター(AD+D:木村浩康/ビジュアルアーティスト:堀井哲史/会場:東京都現代美術館)。

竹尾 ファインペーパー「マーメイド」イメージムービー(AD:関本明子、木村浩康/撮影:金子親一/映像ディレクター:熊倉春陽/サウンドデザイナー:黒瀧節也+ニコリーバイナーラ)。

    今月使った紙:テイクGA-FS

    印刷適性と白さ、細やかな風合いを持つ微塗工印刷用紙です。コストバランスの良さで、パンフレットやフライヤーなど、幅広い印刷物に適しています。

木村浩康(きむら・ひろやす)
フロウプラトウ所属。東京造形大学卒業後、Webプロダクションを経てライゾマティクスに入社。最新のテクノロジーの知見を取り入れ、さまざまなデータを活用したテックドリブンなデザイン制作を行う。文化庁メディア芸術祭最優秀賞など多数受賞。

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