クリエイターの変化するワークスタイルやオフィスを紹介する連載「WORKERS」の番外編として、第2回の対談に参加いただいたのは、2020年、2021年に独立した3人のクリエイター。独立のきっかけや今後どのように働いていきたいか話していただきました。
個人指名で仕事が依頼される時代に
明円:僕は2020年の春に独立を決意したんですが、きっかけはSNS経由で仕事を指名でもらうことが増えてきたからです。これからはクライアントもSNSでクリエイターを探して「あの仕事が好き」「この人に頼んでみたい」と、個人単位で仕事を頼むようになるのではと思いました。それだったら独立して、自分の名前で仕事が受けられる体制をつくるのがいいと考えたんです。
代田:確かにその流れはあって、僕もDMで直接連絡をいただくことが多いですね。その依頼に対して「もっと得意な仲間いるな」と思ったら「この人にお願いした方がいいのでは」とバトンを渡すといったことが、フラットにできるようになりました。逆にバトンを頂戴することもあり、ギルド的に仕事やプロジェクトが回っている流れがあると思います。
石山:僕は以前、エージェンシーにいたときにある企業の方からSNSを通じて直接連絡をもらったことがありました。個人的には受けたい仕事だったんですが、“会社対会社”になると実現が難しいこともありますよね。担当営業を誰にする、誰があいさつに行くんだって。そのときに「興味のある仕事だから個人だったらギャラ関係なく受けるのに」と思ってしまった。そういうことが、ストレスになったんです。自分のやりたい仕事と会社として受けるべき仕事のミスマッチがあって、これはあまり健康的じゃないから、フリーでやった方がいいと思うきっかけのひとつになりました。
代田:すごく共感します。一定のフィーをいただいて、経済的な効果の大きい仕事をして、たくさんの人が潤うことはいいことだと思うんです。でも、自分がやりたいと思ったことに対して自分でブレーキを踏まなきゃいけないとなると自分の人格が崩壊するタイミングが結構あって。そこをシンプルにしたいというのは、僕も独立を決めた理由のひとつです。やりたいと思ったことはやりたいなと。
明円:あと、辞めないことの方が、リスクがありそうだなと思ったんです。仮に辞めてチャレンジに失敗したとしても、どうにかどこかで生きていけるんじゃないかと。独立するっていうのは、ひとつのチャレンジだからひとつ旗が立つと思うんです。こういうチャレンジをするんだっていう。
代田:わかります。楽しいことをやっていればどうにかなるかなって(笑)。逃げているなら次のチャンスはないかもしれないけれど、前向きに倒れたらきっと何か新しい気づきがある。
石山:「よくコロナ禍に、リスクがある中で独立したね」とみんなに言われるけれど、僕としてはこのタイミングがベスト。5年後、10年後独立するにしても、今独立しなかったことを後悔することの方が嫌ですし、そういう人生を自分は選択できないと思いました。また30歳の時に40歳で独立しようと漠然と決めていたってこともあります。
代田:リスクっていうと、言葉通りの不確実性としてのリスクと、その先にあるダメージを一緒くたにしていることが多いと思うんです。独立すると、どうなるかを自分で決められるからリスクは比較的低いというか……。少し格好つけてみたんですが、本当はどうにかなるっしょ、という感じです(笑)。
何をしているときが自分は幸せか?
明円:独立して一番変わったのは、プライベートワークと普通の業務の境目が何もなくなったことだと思います。通常の仕事と、自分のための創作活動というのがなんとなくあって、その2つをごちゃまぜにできるようになりました。いただいたお金はなるべく前向きに使っていきたいと思っています。つくってみたいミュージックビデオや映像表現があったら、そこに投資してみるとか。
石山:僕は社会に貢献できることも模索してやっていきたいと思っています。まずは資金をプールして、いずれは、自分がやりたいことに会社として投資したい。
明円:お金の使い道を考えて、たとえば創作にお金を使うというのも、自分の会社だからできることなのかなとも思ってます。
代田:何で稼ぐか?と同じくくらいに、何にどう使うか?ということが、会社らしさにもつながりますよね。それぞれの経営の“らしさ”だとも思います。
石山:これまで会社の中でガチガチに決められていたものに対して、自分たちの裁量と目利きでいろいろなことをやっていける。独立した人は、そういう面白さを感じているのかもしれませんね。
明円:本当にそうですね。自分で生きていくために必要なことを考えるのもすごく大事なことだなと思いました。気持ちよく働くために何が必要なのかを考える。
代田:お2人の話を聞くと、“自分の幸せの定義”なのかなと思いました。それは、お金がどうこうよりも、「自分が何をやっているときが幸せなんだろう」ということで。そしてひとつに限定する必要もなくて...