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TCC賞

「コピー年鑑」の新しいスタンダードをつくる

2021年3月に発刊した『コピー年鑑2020』は、東京コピーライターズクラブによるTCC賞を受賞した作品をはじめ、優秀作品が収められた年鑑。コロナ禍での審査を経て、2020年を代表する広告コピー784点が収録されている。本年度の審査委員長を務めた照井晶博さんとアートディレクター 色部義昭さん、デザイナー 荒井胤海さんに、コピー年鑑ができるまでの話を聞いた。

「コピー年鑑」が本来果たすべき機能からすべてを発想

編集委員長 照井晶博さんが掲げたテーマは、さまざまな視点や言葉が大集合する「集まる年鑑」。その言葉を体現すべく、糸井重里さんを筆頭に各分野を代表する32名の表現者による2020年の広告・コピーをテーマにした寄稿ページ「COPY2020」をはじめ、TCC賞受賞作には最終審査委員全員の講評を掲載するなど、読みどころいっぱいの「文字だらけの年鑑」になっている。

「まず考えたのは、コピー年鑑とはどういうものなのか、どうあるべきなのか、数多ある広告やデザインの年鑑とはどう違うのか。僕なりにコピー年鑑を再定義することから始めました」と、照井さん。「年鑑の新しいスタンダード」をつくることを、自分の中で目標として掲げた。

「コピー年鑑に収められている広告作品は審査という過程を経て選出され、収録されている。一次審査委員、最終審査委員それぞれがどういう気持ちで審査に臨み、どういう気持ちで投票したのか、その思いや考えをきちんと記録する本でありたいと思いました。審査を経て選ばれた作品が載る。これが年鑑の最大の特徴。だから最終審査委員全員の審査講評を載せよう。投票の有無にかかわらず講評を載せれば、読んだことのない年鑑になるのではと考えました」。

文字だらけの年鑑を美しく仕上げたいと考え、照井さんは年鑑のアートディレクションを、日本デザインセンターのグラフィックデザイナー/アートディレクター 色部義昭さんにお願いした。

「最初に照井さんからお声がけいただいたとき、正直なところ驚きました」と、色部さん。これまでにOsaka MetroのCI、国立公園のブランディングなど、サイン計画やブランディングで多くの実績があるが、広告はほぼ手がけたことがなかった。

「コピーライターというと華やかな仕事という印象があるけれど、そういう側面だけではなく、その職能をきちんと磨き、鍛錬があって、広告という表現が生まれている。そのことをきちんと伝えたい。また、そのことを伝えるのにふさわしい本としての品格、内容にしたいとお聞きして、それであれば少し違う場所にいる自分の視点からコピー年鑑を照井さんが考えるかたちに最適化できるのではないかと思い、お引き受けしました」。

本をめくる所作から導きだした判型

色部さんが照井さんに提案したコピー年鑑は、まさに前例をくつがえすデザインだった。その一つが判型。提示された案は左右幅がカットされていた。「最初に見たとき、幅が狭くなる?作品が小さくなったと、会員の皆さんからご意見が来るんじゃないかと心配になりました(笑)」(照井さん)。そんな照井さんの気持ちを払拭したのが、その判型の束見本を実際に手にしたときだ。「めくりやすく、手になじみ、生理的に読みやすい。これはデータを見ただけではわからないことでした」(照井さん)。

本年度の年鑑は従来に比べて、左右幅は33mm細くなっている。とはいえ...

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