クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、matohuのデザイナー堀畑裕之さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『日本の配色』
佐野敬彦(著)
(PIE International)
「日本の色とは何か?」という問いには、シンプルな答えがあるわけではない。なぜなら色は、国や地域に限らずこの世界に無限にあふれているからだ。
だが、別の答え方はある。それは日本人が長い歴史の中でどんな色を組み合わせてきたか、どんな着物や工芸、芸能を生み出してきたかという、その「配色」を見ることだ。色の重なりや組み合わせこそが、民族独自の好みを描き出す。それはこの国の自然がたたえている色のメタファーであり、歴史や伝統が積み重ねてきた固有の美意識が結実したものだ。
現代でもはっ!とするような斬新な色の組み合わせの屏風、祭りの衣装や着物、うつわ、浮世絵などが、豊富な写真で図解されていて、見ているだけで楽しくなる。その繊細な色合わせに、誰もが触発されるだろう。そして同時に現代にも通じるそのデザインの力にも驚くはずだ。
自分たちにとって当たり前でちょっと懐かしい色合いも、初めて見る外国人のようなウブな眼で見つめることができるなら、学ぶべきことがたくさんある。そしてその配色に、現代の自分らしい色を加えることができるなら、あなたも「日本の色」を更新する歴史に参加しているだろう。