あの人はどう考えているの?質問に対して、複数のクリエイターに回答していただくコーナーです。
新鮮な埃
犬の毛が落ちてる。貴重な本が山のように積まれてる。床に足の踏み場がない。初めて入社した会社コズフィッシュは、ごみとお宝がごちゃまぜになった場所。明らかにごみと思われるものを捨てて積もった埃をはらうのが、入社してすぐのわたしの毎朝の習慣でした。それがいつのまにか、いくら散らかってても素通りで目の前の仕事に向かう日々。春がくるとまたちょっときれいにしようと頑張るんだけど、一度慣れてしまうとなかなか。
初任給
資生堂に入社すると、1カ月の新人研修を経て5月の連休明けに銀座のデザイン室に配属された。やることといえば、ひたすら資生堂書体というオリジナル書体の手描きによる練習。来る日も来る日もそればかり、あまりの退屈さに、ふと思いついたのが母の日のプレゼント。初任給で買った森英恵の長財布を実家の母に送った。それから32年、母がその財布を使っている姿を一度も見ていない。いまどこに?春が来るたびに、ふと思い出す。