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パッケージデザインとサステナビリティ

消費者意識の変化を捉える パッケージデザイン6つのポイント

三原美奈子(三原美奈子デザイン)

日本でもサステナビリティに対する意識が今後ますます高まっていくとみられる今。数々のパッケージデザインを研究、発信しているデザイナーの三原美奈子さんが、近ごろ注目を集めている実例をもとに消費者意識の変化を捉えるポイントを解説する。

購買行動と消費者意識の変化を捉える パッケージデザインのポイント

筆者作成

会社の未来を映すサステナビリティ

ここ数年、大手メーカーではサステナビリティ重視のパッケージデザインへと大きく舵を切ったように感じます。特に2019年、ネスレ「キットカット」のピロー包装が紙化したこと、2020年にレジ袋が有料になったことは、一般消費者の日常生活に大きなインパクトをもたらしました。これまでどこか「遠い目標」だったものが急に目の前に突きつけられたのです。

私はパッケージデザイナーとして、日本パッケージデザイン協会に属していますが、そこでの勉強会などで比較的早く3R(Reduce・Reuse・Recycle)やサステナビリティに関して知識を得ていました。それが現場で、クライアントワークの中に言葉として登場したのは2~3年前から。実装していこうという動きにはまだ各社で差があり、難しい面がありますが「サステナブルなパッケージを推進しなければ会社としての未来がない」という切羽詰まった声も聞かれます。

一方、視点を変えて消費者側に立ってみると、サステナビリティに前向きな企業や商品についてどのような印象を持っているか。実際に購買に影響があるのか、とても興味深いところです。また、ここ1年の生活様式の変化と相まって、今どういったデザインが求められるのかを考えてみたいと思います。

家具から出た端材を使った「BAUM」

パッケージデザインには、購入から消費までの時間が数分のものもあれば、年単位で長期間使い続けるというものもあります。気に入った化粧品などは後者の代表的なもので、スキンケアや化粧品は自分自身の好みやスタイルが反映されたものが欲しくなる。資生堂の「BAUM」はそういったデザイン性とサステナビリティがマッチしたブランドだと思いました。

ジェンダーニュートラルであることも大きな魅力です。実際に私も数点購入しましたが、カリモクの家具から出た端材を使ったボトルは部屋に置いているだけで気持ちが和みます。

販売時も紙袋はつくらない。小さな商品サンプルの配布でさえ、透明フィルムなどには入れず紙クリップで留めるスマートさ。こびない、ぶれない姿勢がブランドイメージとも重なります。

資生堂のスキンケアブランド「BAUM」。カリモクの家具から出た端材を使用。

「雪肌精」は外箱を段ボール素材に

「BAUM」のような新規ブランドだと当初からサステナビリティを意識した商品づくりができますが、歴史あるブランドではどうでしょう。30年以上の歴史があるコーセーのスキンケアブランド「雪肌精」が段ボール素材で外箱のパッケージをつくると聞いた時は耳を疑いました。

段ボールの素材感は人気があり、最近ではお菓子など食品パッケージでも増えてきましたが、品質感、透きとおるイメージが重要なスキンケア品での採用はとても大きなチャレンジだったのではないかと思います。個人的には雪肌精のイメージも大きく変わりました。どちらかというと若年層向けのブランドという見方がありましたが、一気にエイジフリーになり、購買層が広がったように感じました。

2020年に段ボール素材の外箱を導入したコーセー「雪肌精」。

生活に馴染む「エコストア」のデザイン

一方、食品や日雑品に目を向けてみましょう。スーパーマーケットやドラッグストアに並ぶ訴求力旺盛なパッケージデザインの中に、徐々に「生活に馴染むデザイン」が増えてきました。身の回りのものに気を配り、丁寧な暮らしをする──そんなパッケージデザインはサステナビリティとも相性が良さそうです。

ニュージーランドの「エコストア」は、サトウキビを...

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