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寺尾紗穂さんがおすすめする4冊の本

寺尾紗穂

クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、文筆家、音楽家の寺尾紗穂さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『ニーチェ全集8 悦ばしき知識』

フリードリッヒ・ニーチェ(著)、信太正三(訳)
(ちくま学芸文庫)

年始に海外取材に行った。戦争体験者の話を聞くので、相手がOKならこの時期でも取材に行く。様子をみて、と言っている間に亡くなってしまう可能性があるからだ。帰国後、二週間の自宅待機。ところが「子どもも二週間休むべき」と学校から電話が来て驚いた。子どもの学ぶ権利が簡単に二週間も奪われていいのか?結局四日後に自費でPCR検査を受け、医者に「登校制限不要」と意見書を書いてもらい登校が許された。「空港を出る前にPCRしてるのに。そんなに言うなら学校が検査費半額出すべき」と医者も怒っていた。

我が家はシングルなので「お父さんが飲み屋で感染して帰ってくる可能性」はない。誰もが家庭内や市中感染し得る現在、家庭ごとの感染可能性の多少は容易に判断できないはずだが、「海外からの帰国者」への恐怖心で先走っているように感じた。

ニーチェは人間の生みだした論理はもともと非論理に由来すると喝破した。また「健康」という概念も、個々によって異なるものであると説く。コロナ禍の最も大きな課題は「生活をどこまで制限するか」だ。「一律同じ」こそが「安心、安全」と流されてしまいやすい今、ニーチェが指摘した個の個別性に立ち返ることは非常に重要だろう。

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