「見えづらい」を「見える」に変えるプロジェクト
2006年に富士通研究所から独立し、半導体レーザの開発・製造・販売を手がけてきたQDレーザ(神奈川・川崎)。弱視(ロービジョン)の人をサポートするレーザ技術を有し、製品化を進めてきた。20年12月には電通やAOI Pro.とともにその技術を活用したプロジェクト「With My Eyes」を開始した。
SDGsの達成へ クリエイターが考える持続可能な社会
2020年12月にβ版がリリースされた、マップ型ポータルアプリ「slowz」。サステナビリティに関連する店舗や飲食店をマップ上で見ることができ、気になったお店を「お気に入り」に登録できる。現段階では渋谷エリアの約80カ所が対象となっている。
企画・制作をしているのは、「終わらない自由研究」をコンセプトとして建築内外での実験的な活動を行う建築クリエイティブスタジオ、NoMaDoSのブランドプロデューサー 田中滉大さんを中心とした、20代~30代のチーム。なぜアプリの開発に至ったのだろうか。
きっかけは田中さんが同社で、建築の設備や都市、ランドスケープを含むサステナブルな都市やエリアを企画・デザインする「環境設計」を主眼とした新しいサービスの立ち上げを試みたことだった。そのために2019年、サステナビリティに特化した作品でアワード実績をつくろうと考える。その時にプロデュースしたのが「人工タンパク質でつくる建築」というアイデア。これは結果的に「LEXUS DESIGN AWARD 2020」のショートリストに選出されることになる。
この制作の過程で田中さんが、国内・海外のサステナビリティに関する情報ソースを調べていくうちに、情報量や実装事例の数に明らかな差を感じたことが、アプリ制作の契機となった。
「特に“サステナブル先進国”と言われる北欧などの国々では、すでに行動に移している方々がたくさんいて。日本の消費者意識との明らかなギャップを感じました。だからといって海外の先進的な取り組みをそのまま輸入しても、受容する人の意識に差がある現状ではきっとうまく機能しない。まずは一番身近な生活の中でサステナビリティに関する情報や生活の選択肢に触れられるよう、アプリという形でプラットフォームをつくろうと考えました」(田中さん)。
一方で、「僕自身もサステナビリティを行動に落とし込めていたかというと、そうでもなかった」と田中さんは当時を振り返る。「だからこそ、僕でも継続して実践していける仕組みはどんなものだろう?と考えたんです。いくらサステナブルなアクションでも、継続しないと意味が無い。サステナブルは、ゴールではなく状態です。その状態づくりのために、『当たり前に無理がない』取り組みを続けられるものにしよう、と考えていきました」(田中さん)。
「slowz」という名前にも、その想いが込められている。「昨今のどんどん加速する情報社会へのアンチテーゼです。自分らしいスピードで生きないと苦しいし、自分自身の存在もサステナブルではなくなってしまう。でも単にスローにすればいいということでもなく、まずはスローにして、無理なく適正なスピードを見つけよう、という意図があります」と、田中さん。
シンプルなUI設計もそのための工夫のひとつだ。アプリを起動すると、マップ上にslowzチームによる取材を経て選定したお店のアイコンが表示される。アイコンは、「自然保護」「動物保護」「ゴミ削減」などを色で分けた6つの「サステナブルジャンル」と、「カフェ」「レストラン」「イベント」「マーケット」などをアイコンで表した7つの「アクションジャンル」の掛け合わせで、計42種類。それぞれのジャンルごとにお店を検索することも...