アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
三重県の海に面した鳥羽市の生まれです。絵を描くことが得意で、でもファインアートでは食べていけないような気がして、商業美術であるデザインを学ぼうと美大を目指しました。1度目の大学受験はあえなく失敗。上京して予備校に通いながら、国分寺で1年間浪人生活を送っていました。
その頃買っていた情報誌『シティロード』を読んでいる時に、ふと日仏会館でロシアのアニメーション作品を上映する、という告知に目が行きました。そこに、ユーリー・ノルシュテインのアニメーション作品『霧の中のハリネズミ』のビジュアルが載っていた。魅力的で、(こういう絵が動くアニメーションってどんなものなんだろう?)と思い、見に行きました。
実際に見てみると、まあ、圧倒されました。絵画が動いているかのような精巧さ、絵の奥行き、没入感。ストーリーはハリネズミが霧の中をさまよい、最後にクマさんの家でお茶を飲むというシンプルなものですが、その何気ないさまがハリネズミの視点から見事に描かれていました。同時に見た29分の映像詩『話の話』にも衝撃を受けました。散文的・断片的にさまざまなシーンで構成されていて、正直「わからない」。でも見終わった時に、温かさ、優しさ、悲しさがストレートに伝わってくる感覚。アニメーションの持つ可能性に圧倒され、「僕もいつか自分でつくりたい」と...