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感じるブックジャケット(AD)

「一点もの」という価値を有するブックジャケット

安藤真理「L’unique」

電子書籍では得られない紙の本の魅力のひとつが、手触りや質感だ。ブックジャケットをつけられるのも本ならではの楽しさ。このコーナーではさまざまな質感を持つ竹尾のファインペーパーを使用し、そこに多彩な印刷加工技術を掛け合わせることで、触って感じる新しいブックジャケットを提案していく。

「一点もの」という価値を有する紙

1994年生まれの「フレンチマーブル」は自然石に近い色の深みや、温かな質感が特徴的なファインペーパーだ。装丁やパンフレットなどに広く使われ、トラディショナルなイメージが強い紙でもある。ランダムな大理石模様の個性を活かし、新たな魅力を吹き込むブックジャケットをデザインしたのはスタジオディテイルズ アートディレクター/デザイナー 安藤真理さんだ。

タイトルの「L'unique」は、フランス語で「唯一無二」「ただひとつのもの」を意味する。「1枚ごとに模様が違う紙なので、このブックジャケット自体もすべて一点もの。そこで女性が“一点もの”のジャケットを羽織っている姿をシンボルに。ジャケットの部分にはエンボス加工を施し、背景に白いストライプを入れることでその存在を際立たせています。白線の隙間から見える紙の濃淡で、ふんわりとした春の空気感を出しているのもポイント。淡い色合いのマーブル模様とラフな手触りを活かし、柔らかな雰囲気に仕上げました」(安藤さん)。

顔まわりには青・白・赤のトリコロールカラーを用いたほか、消金の箔押しでジャケットのボタンを表現した。その姿はまさにパリジェンヌそのもの。裏表紙には“Marbre Français(フレンチマーブル)”“L'unique veste pour vous(あなたのためのただひとつのジャケット)”といったように、ブティックのロゴを思わせる箔押しで一点ものという価値を強めている。

紙の色はグレー、サンセット、ローズの3種類。それぞれ異なる個性があり、ジャケット部分の模様を見比べてみる楽しさもある。「コロナで外出が難しい状況が続いていますが、春に向けて気持ちを和ませるようなブックジャケットになれば。ゆったりとした読書の時間とともに、“あなただけの物語”を楽しんでいただけたら嬉しいです」(安藤さん)。

生川機械 CI

コピーライターズクラブ名古屋『CCN年鑑2019』

愛知県海部郡飛島村のもなかアイス「もっと」パッケージ

キングパン協業組合「まるごと全粒粉パン」パッケージ

    今月使った紙:フレンチマーブル

    大理石模様のファインペーパーです。フランス産の自然石から着想した淡い色味の3色展開。大理石の見せる格調の高さとダイナミックな動きの中に深い素材の味わいを宿します。

安藤真理(あんどう・まり)
1986年名古屋生まれ。スタジオディテイルズ所属。名古屋大学工学部、広告デザイン専門学校卒業。日本タイポグラフィ年鑑グランプリ、AICHI AD AWARDS 金賞・新人賞、Topawards Asia、TCC審査委員長賞など受賞。

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