クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、プロダクトデザイナーの横関亮太さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『風立ちぬ 宮崎駿の妄想カムバック』
宮崎駿(著)
(大日本絵画)
私は妄想が好きである。なかでも尊敬するクリエイターたちのモノづくりの姿勢やプロセス、苦労を勝手に妄想することが好きなのである。
多くのジブリ作品を見て育ってきたが、『風立ちぬ』は何度も見返すほど大好きな作品だ。主人公である堀越二郎氏が、時代の波に翻弄されながらも、モノづくりの魅力に取り憑かれ、自らが信じる美しいものをつくることに没頭し表現し続ける姿は、とても心を動かされる。またその背後に監督である宮崎駿氏自身も表現者として追求し続ける姿勢が垣間見えることが、さらに私の創作意欲を鼓舞してくれる。
本書の中で、宮崎氏は映画では表現していない部分も描いているのだが、創作の過程で彼が何を取捨選択していったのかは興味深く、その後ろにある苦労や葛藤みたいなものを、さらに自分なりに妄想する余白があることも楽しい。
表現者としてのクオリティから学ぶことはもちろんのこと、彼らの姿勢から多くの刺激を受けるのである。
集中力が切れてしまったときには、この映画や本書に触れることで宮崎氏に喝を入れてもらうのである。