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【座談会】2020→2021 CMの現在地 ど真ん中には何がある?

哀しきCMプランナーの会 (その2)

12月のとある夜、オンライン画面でひっそりつながる7人の姿が……。そうです、今年もやります。CMプランナー 福里真一さんを中心に、第一線で活躍するCMプランナー7人が集まった「哀しきCMプランナーの会」。新型コロナで、いろいろ変わり、いろいろ乗り越えた1年。2020年という年を、3つのテーマから振り返っていただきました。

緊急事態宣言下につくられた「話そう。」

福里:「哀しきCMプランナーの会」がブレーンに載るのは2019年に続き2回目ですね。この会は、CMプランナーという職種が、CMや動画制作において決定的な役割を果たしているにもかかわらず、職種として評価されてないという哀しみ、そして「CMばかりやってるのはかっこよくない」みたいな視線への哀しみを感じる人たちが集まって語り合う場です。イケイケの人ばかりが集いがちな『ブレーン』に、こういう場所があるのはいいことなんじゃないでしょうか(笑)。

今回は3つのテーマで話し合いたいと思います。ひとつめのテーマは「コロナとCM」。コロナが、働き方とか暮らし方ではなく、CM表現そのものにどんな影響を与えたのか。まずは栗田さんが関わったサントリー「話そう。」の話から、どうでしょう。

サントリーコミュニケーションズのWeb動画「話そう。」シリーズは、「人と人が話す」ことの価値を伝えてくれた。

栗田:「話そう。」はコロナ下で人との繋がりが希薄になる中で「人と人が話す」ことの価値を改めて伝えようと、堺雅人さんなど37名のタレントさんに出演していただいたWeb動画シリーズです。これをつくったのは緊急事態宣言下の5月。誰もが何を言っていいのかわからず、皆が広告を自粛している雰囲気もあり、その中でサントリーさんと「今言えることは?」と探る中で生まれたものです。

当時はオンライン飲み会が流行りはじめていた頃でしたが、「話そう。」はオンライン飲み会を、というよりも人と人とのコミュニケーションが増えれば世の中の人の心がちょっと軽くなるのでは、と考えた企画で。緊急事態宣言中にすぐ届けたい!となり、クライアントさんや電通のクリエーティブディレクター 田中直基さんをはじめとするスタッフが一丸となり、フルリモートで撮影しました。

福里:たくさんのタレントさんたちが、同じように不安を抱えていることをそのまま見せてもらって、ほっとした人も多かったんじゃないでしょうか。サントリーの商品は飲み物だけど「みんなで一緒に飲もう」じゃなくて「話そう」に落とし込んでいったのもよかったですよね。

山本:あれでサントリーはコミュニケーションの会社なんだなとわかりますよね。いい企業広告になっていると思いました。

福里:その後のCMでも、コロナは意識しましたか?

栗田:世の中の深刻な空気は前提に考えざるをえないと思っています。でも、サントリー「デカビタC」の企画で、ゆるキャラが元気になるWeb動画「元気すぎるご当地キャラ」篇(20年8月公開)を「コロナの時期に元気になっていいのかな」と不安になりながら世に出したところ、皆さん楽しんでくれて。人間ってタフだなと。暗い空気の中で逆にぬけているものも求められていると感じました。

福里:CMぐらいは、いつも通りぬけぬけとした表現でほっとしてもらう、というのもひとつのあり方ですよね。

サントリー食品インターナショナル デカビタC「元気すぎるご当地キャラ」篇の元気になる表現は、多くの人を楽しませた。

コロナ下におけるCM表現

大石:僕は毎年担当している福井県の塾「今西数英教室」のCM制作時、コロナでロケに行けなくなってしまいました。そこで撮影なしで、10年分のCM本編に使わなかった素材を90秒でつなぐことに。放課後、駅から塾まで歩く道のりの情景を歌詞にこめた歌をのせ、「九頭龍の橋」「高志高校」など福井にしかない名前をたくさん入れて、その歌詞と絵で「当たり前と思っていた教室、みんなで授業をできていたことの、かけがえのなさ」を伝えるCMにしました。

今西数英教室のWeb動画「2020」篇。10年分のCM本編に使わなかった素材をつないだ。

鈴木:僕は最近、自分の健康をリスクから守るサントリーの健康茶の統合キャンペーン「自分防衛団」のCMをつくりました。健康を応援するお茶がこのタイミングでどうメッセージを発するかというときに、皆の心に健康に対する意識が根づいた今の瞬間をチャンスととらえて、メッセージしてみようという話になって。今はリモートでルーティーンがなくなって、業界全体で飲料の売上が落ちる傾向もあるようですが、このCMのメッセージが共感されたのか、CMで取り上げた5品の売上は全部伸びたそうです。メッセージできちんと売上が変わるんだな、という気づきがありましたね。

サントリー食品インターナショナルが実施した、健康茶5品の統合キャンペーン「自分防衛団」。

吉兼:僕は地元の山口県に2カ月半ぐらい帰って、ほぼ毎日、子どもと海に行って、カニを獲ったりする生活をしていました。少し前から人間関係のデジタル化が加速していることになんだか気持ち悪くなっていて、温かみのあるものが必要とされてほしいなと思っていて。2019年に、落合陽一さんが、今のデジタル世代は重さや湿度、高い解像度のものに憧れをもっているということをテーマにした「質量への憧憬」という写真展をされていたのですが、とても共感しました。僕らもアナログの世界にあった違和感、温もり、美しさ、手触りみたいなものをCMに取り入れていくべきなんじゃないかなと感じています。

福里:ひとりでクリエイターっぽいことを言いますね(笑)。私はサントリーの「BOSS」で「宇宙人ジョーンズ・宇宙人からのアドバイス」篇を撮影は一切やめて、過去の映像の編集だけでつくりました。宇宙人が新しい生活様式についてアドバイスするというものなんですが、やっぱりこういう時にもユーモアを忘れないことが大事なんじゃないかと思いながらつくっていた記憶があります。

大石:最後のジョーンズのナレーションの「もし缶コーヒーが飲みたくなったら、さっと買って、さっと出る。」の一歩ひいた押しつけない感じがとても素敵で、福里さんらしいと思いました。

過去に放送したCMを編集し、新しい生活様式のアドバイスをするサントリー食品インターナショナル/BOSS「宇宙人ジョーンズ・宇宙人からのアドバイス」篇。

CM表現は、シンプルに、“大づくり”で?

福里:今もコロナの状況は続いていますが、求められる表現に変化はありますか?

神田:僕はステイホーム期間中に企画の考え方を変えたんです。リモートワークになったり、感染状況や今後の景気が気になったりして、以前とは接触する情報量、質、リズムが大きく変わったと感じています。情報の変化が著しい不慣れな変革期に接触していくテレビCMとしては、こまごまとした構造だと今の視聴者の気分と合わず、情報の取り方でも不和が起きてくる気がして。これまでは15秒の中で導入があって、展開、オチを入れてと、構造でつくり込んでいましたが、もっと“大づくり”でシンプルなものに、と考え方を変えました。

栗田:神田さんがおっしゃっていること、わかります。今は他に情報をいっぱい取らないといけなくて、脳内の情報量が飽和状態で、広告を入れるスペースが空いてない感じがするんですよね。自分も同じように、フリがあって、オチがある企画構造が好きなんですが、今の気分はもっと一発芸的というか。ワントーンのテーマが決まっていて、脳に負荷をかけずとも理解してもらえるものがヒットしていると感じます。

吉兼:それはさっき僕がクリエイター気取りで言ったことと繋がるかも。デジタルの世界に疲れていて、カッティングしてある15秒よりも、ゆったり見られる方が単純に落ち着くんですよね。僕は日本郵便の嵐の年賀状のCMを2年連続で担当させてもらいましたが、30秒で3カットぐらいの緩いものにして、繋がりを表現しているんです。

山本:凄くわかります。ダイハツ「ムーヴキャンバス」のCMは、車が引きで置いてあるワンカットで、音楽が印象的ですがナレーションもない。初めて見たときは車名も言わないので、こんなに突き放していいのかと、驚いたんです。でも改めて見るとそれゆえに目立っていて心地いいですよね。

鈴木:僕は感度が低いのかその流れに全く気づかずに、むしろカット数が増えてます(笑)。でも家ではみんなテレビにかじりついてたから、集中して見てくれるようになったのかなと。

福里:たしかに最近、はっきりしたオチもなくそのまま終わる、みたいなCM増えていますよね。わかっている人たちは、やりはじめてるんだなあ。

海辺に停まっている1台の車がワンカットで映し出されるダイハツ/ムーヴキャンバスのテレビCM「COLORING LIFE 海」篇。

CMプランナー「岡康道」を語る

福里:2番目のテーマは「岡康道さん」です。2020年はCMプランナーの代表的な存在だった岡さんがお亡くなりになりました。

鈴木:僕は岡さんと一度だけ一緒に仕事することができたのですが、最初に企画を持って行ったときに「こんなに忖度したセリフしか書けないのか。人間が発するセリフじゃないな」とまず言われて。それで自分が今までの仕事で、いかに企業の言いたいことをCMに詰め込んできたか。そしてそれがテレビの前の人を置き去りにしていたのかもしれない、と気づかされました。

神田:僕もとある機会に岡さんと何度か打ち合わせをさせていただいて、これがクリエイティブディレクター(CD)なんだと初めて認識したほど目から鱗でした。字コンテを提出したら、「ここは△、ここは×、ここのセリフいらない」と、一気に赤を入れていくんです。見てみるとシャープに、とても良くなっていて、こんなに瞬間的に判断できるのはCMプランナーとしてものすごいし、これが本物のCDなんだな、と体感しました。

福里:岡さんはCDとしてもすごい方だと思いますが、ここではぜひすばらしいCMプランナーとして語りたいですね。私は勝手に岡さんの人間を見る目線に自分に近いものを感じて、20代のときは岡作品をまとめたVHSを繰り返し見ていました。今、岡さん的なCMが世の中にない気がするけど、それはなぜなのか。まずは皆さんが一番好きな岡さんのCMを言ってみましょうか。

山本:J-PHONEのCM「言葉の珠」篇ですね。ハードボイルドでめちゃくちゃかっこいい。あんな企画をどうやって考えて、クライアントに通すんだろうと。当時、あのCMで世の中が凄く動いたことも覚えていて、大好きです。

栗田:僕はお会いしたことはなかったけど、『TUGBOAT 10 Years』(美術出版社)は広告本の中で最も読み返しているくらいのバイブルで、岡さんのことを尊敬しています。日本民間放送連盟の「オリンピックがなければ、平凡な夏でした。」は一番好きなCM3本のうちの1本に入りますし、学生のときにオンエアで見たことも覚えています。岡さんのCMは本当の人間が出てくる感じがするんですよね。CMは常に明るくて前向きな、ともすれば嘘っぽい人間が出てくるものですが、岡さんの描く人間は暗い部分、悶々とした部分も抱えた本当の人間で。人間に対してすごく正直だった人なんじゃないかと思っています。

「本当の人間」を描くこと

栗田:以前、カシワバラ・コーポレーションのマンション修繕のCM「大規模修繕な人々」シリーズで岡さん的なことを考えて…

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